「人財って?」「組織のためになんか働かない人材のことさ」

多くの場合、組織論みたいなことはその組織を作っている側、つまり

「企業側」
「経営側」

からの視点で語られます。

しかし、ここでは「個人の成功」とか「個人としての考え方」を主なテーマとしているので、

「組織に属する人の側」
「雇用されて実際に働く側」

の視点で、組織とはどういうものかを考えていきたいと思います。

人材と人財

まず、しばしば

「人材じゃなくて、人財だ!」

とか言われますが……。

こういう言い方は何となく表面だけ媚びているような胡散臭い印象もあって、なんか気持ち悪い感じが漂います。私的に。

それはさて置き……では現実の組織にとって、真に「人財」と言えるのはどういう人なのか?

これを本当に現実的に考えるとすると、たぶんそれは世の中の一般的なイメージとはかけ離れたものではないかと、指摘せざるを得ません。

少しうがった見方かもしれませんが、ある面で真実を突いているのではないでしょうか?

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組織に対する関わりかたは人によって違う

ところで、私は就職してから5年間勤めた後、今度はある会社の取締役になりました。

年齢からすると大役でしたが前職の経験をふんだんに活かせる内容だと感じたので、私は挑戦するつもりで、さらに仕事熱を高めていったのを思い出します。

会社はまだ小さいながらも事業は拡大傾向にあり、ありがちなことですがそこでは現場の社員の方に無理を承知で協力を求める場面がたびたびありました。

すると、非常に親身になって動いてくれる一部のモチベーションの高い社員と、表面的には迎合しながらもどうにかして負荷の大きい仕事は免れようとする社員というのがきわめて明確に分かれることに気が付きました

私も、最初はもちろん以前と同じように熱心にコミュニケーションを取ったり、具体的な指導をしたり、あるときは相手の情に訴えたりもしました。

しかし、前職のように常に現場で顔を突き合わせていっしょに働いている立場とは異なり、そういう手段はあまり効果的とは思えなくなったのです。

モチベーションの高い人について

そもそもモチベーションの高い社員というのは、もちろん能力もあり高い成果を期待できます。

一般的に言えば、彼らこそ「人財」です。

しかし、そういう社員はそもそも……別に感情に訴えたからとか、私がどういう人間だからというようなことで協力するかどうかを決めているわけではないようです。

彼らは、私に協力するという感覚ではなくて、組織の中にあって基本的にはあくまで自分のため、自分の目的を達するために初めから自発的に一生けんめい仕事しているように見えます。

押しなべて言えば、そういう彼らに対して過剰なコミュニケーションや、心理的、感情的な意味での誘導のようなアプローチは必要ないように感じました

それよりも彼らに必要なのは

① 具体的で明確な指示
② 正しい評価
③ そして将来に対する希望

なのです。

モチベーションの低い人について

それに対して、あまり仕事に忠実でない人。どちらかというと成果を期待できない社員たち。

……そういうタイプの社員と言うのも当然どんな組織にでも一定の割合存在しているもので、私の主な関心は彼らをどうやって仕事に集中させるか、どうやって能力をより発揮させるか、というような面に傾いていきました。

彼らは、たとえば私が会社の方針や一つひとつの業務の重要性などを個別に訴えてもほとんどまともに取り合ってくれません

もちろん、そうかと言って面と向かって反発するような態度も見せません。

言葉では理解を示している、その割には実際の行動に結びつくことはほとんどなく、具体的に指摘してものらりくらりと言い訳するだけです。

そもそも行動を改善しようという意思がまったく伝わってこないので、私と彼らのコミュニケーションはいつもほとんど言葉遊びだけの不毛なものになってしまうのです。

そこでどうしたかというと……私は時にあえてかなり事務的な手法でアプローチすることを選びました。

たとえば

「このままではあなたは困った状況に追い込まれるかもしれません」

とか

「期限までに達成されない場合、あなたの役割はより限定的になります」

というようなことを明に暗に伝えます。

ここに書くのは憚られますが、もっと直接的な言い方や態度を使ったことも正直あります。

前職の時にはこんなやり方は考えもしませんでしたが……はっきり言って、そういうタイプの人には自分の立場に危機感を持たせるような言葉を使って圧力をかけるわけです

そして幸か感幸か……こういった手法のほうが案外有効である場合が少なくありません。

もちろん辞めていく人もいます。

しかしそれはむしろかなり少数でした。

多くの場合、彼らはこのようにある程度

「はっきり言われると」

それに従って必要な役割を一生懸命果たそうとしているように見えました。

つまり、多くの場合、モチベーションが低かろうと上司に不満や反発があろうと……だれだってその組織の中で自分の置かれている状況や立場そのものは分かっているのです。

組織における内部の協力体制というのは、むしろこういった面によって強化されているのかもしれない……私はそう実感せずにはいられませんでした。

単なる好意ではない心理

「いかに他人を自分に協力させるか」

という観点から言うと、協力しようとする動機というのは相手の魅力や熱意ということよりも本人が置かれている立場や状況に大きく左右されるようにも見えます。

人を雇う立場で見ると、当然モチベーションも高く定着率もよいというのが好ましいでしょう。

しかし私の印象からすると、たとえば自分の意思をしっかり持って自発的に仕事の成果を追求するような前向きなタイプの人が定着率の面でも優れているかというと、必ずしもそうではない気がします。

むしろ、きわめて定着率のよいのは……働かなければならない理由だけが明確にあって、しかし実際の働き方や自分の希望についてそれほどこだわりがないタイプの人たちです。

悪い言い方になるかもしれませんが、組織の中で求められている自分の立場を理解してそれに忠実にふるまうことが

「最終目的」

になっているようなタイプの人たち……このような人こそ現実に長期にわたって実質的に組織を支える「人財」なのです

しかし、多くの企業は「優秀に見える人」「モチベーションの高い人」の力をより引き出し、定着率も上げるような方策を優先的に考えようとします。

感情としては理解できます。

しかし、それが本当に企業や組織の強化、人材確保に寄与しているのかどうか……私はかなり疑わしいと思うわけです。

優秀な人ほど定着率が悪い

よく経営者の方などから

「能力もあり姿勢も前向きな人ほど先に辞めてゆく」

というような愚痴が聞かれることがあります。

もちろんそれは往々にして客観的な話ではなくて、多くの場合はおそらく、特定の人に対する期待が大きかったためにそういう印象が強く残っているということもあるでしょう。

ただ、組織に保護を求め組織の支配を歓迎する人は定着率が良く、そうでない場合自分にとって必要がなくなるとすぐに去って行くというのは、上のように考察すると、流れとしても十分に理解できます。

つまり、そのほうが自然だということです。

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