業務改善は「机上の計算」よりも「心理的負担の軽減」がポイント

よくある話ですが、業務効率を上げようと思って改善を試みた結果、以前よりもかえって仕事がはかどらなくなったり、協力や連携が取りにくくなったりする例は非常に多いと思います。

これは、個人単位で考えてもそうですし、全体で見ても結果的に「改悪」だと思われる場合は少なくありません。

もちろんさまざまな原因が考えられますが、ひとつ挙げておきたいのは、その改善はそれを担当する本人の心理的なストレスを軽減することに寄与するか……という観点です。

これに関して、個人レベルで私が意識しているキーワードとして

① Automatic
② Zone
③ Dynamic

の3つの言葉を挙げたいと思います。

心理的な業務改善のキーワード「Automatic」化

原則、業務改善の流れは個人の場合でも「ECRS(イクルス)」に沿って考えますが、それと同時に最近私が意識する業務効率に関するキーワードとして

「Automatic化」

があります。これはどんなことかというと、イメージとしては

「ここからここまでの作業は……なーんにも考えなくて半ば自動的にやっちゃうことにする」

ということです。特に毎日繰り返し行うルーチン的な業務は、まるで

① 朝起きて
② トイレに行って
③ 歯磨きして
④ 髭剃って
⑤ 顔を洗って
⑥ 着替える

……みたいな、いわば無意識に自動的に動くようなものにしてしまうということです。

別にこれは朝一である必要はありませんけど。

その種の業務は一日のどこかの時間帯で、気持ちの上での負担なく勝手に終わってる……というふうにしたいわけです。

で、こういった作業は一日に何度もバラバラ存在すると、それだけ周囲の状況とかイレギュラーな事態の影響を受けやすくなりますし、そうでなくても、たとえば一日の中で定時業務が何か所にも散在しているとその都度気持ちの切り替えに多少なりとも心理的負荷がかかります。

なので、効率化の面から言えば日々行うべき定型的な業務はなるべくひとつの時間帯に集約してしまったほうがいいです。流れで一気に全部終わらせるのが理想です。

意識的に「Zone」の時間帯を作る

Zone(ゾーン)とは、主にスポーツ選手などが高度なパフォーマンスを実現する際に見られる「非常に集中した状態」のことを指しますが、単に一つの目的に意識が集中できているというだけではなくて、表現としては

「体が勝手に動く感じ」
「まるで時間が止まっているような感覚」
「自分の肉体や神経が極度に研ぎ澄まされている感じ」

といった体感を伴うような状態のことです。

しかし、実はZone状態というのはもっと一般的に考えれば、スポーツなど肉体的なパフォーマンスに限らず、たとえば

・音楽家や楽器演奏者が常人ではあり得ないような複雑な演奏を当たり前のようにできる
・小説家などが、まるで初めから出来上がっていたように短時間で作品を書き上げる

といった場合にも当てはまるでしょう。

あるいは、私たち自身もたとえば勉強や仕事などの場面で実体験から体感的に知っているものとも言えます。実際はだれでも、自分でも驚くほど集中できて、すごい成果を得たという経験を一度や二度くらいなら持っている場合があると思います。

つまり、肉体的運動に限定しなくても、それと同様のハイパフォーマンス状態を発生させるという意味ではあらゆる作業や行為に起こり得ます。

ただし、私たちの場合はこれがたいていの場合かなりランダムで、どちらかというとなぜか分からないけど偶然そういう状態が起こった……という認識であることが多いでしょう。

最近はこの「Zone」の状態を意識的に作るための方法論の研究も盛んに行われており、たとえば呼吸法とか儀式的な動作(ルーティーン)等を用いる技術が紹介されています。

ただ、実体験上の感覚から考えると、実は再現性のあるZoneを作るためには前提として

「日常的にその行為、動作を相当の頻度、回数で繰り返している

必要があるように感じます。

逆に言うと、たとえば毎日ルーチン的に繰り返している作業や動作については、私たちはある意味ごくかんたんにZone状態に持って行けるということを経験からすでに知っているのです。

たとえば、自分の仕事や業務の範囲で一定時間Zone状態を発生させることができれば、きっと大幅な時間短縮、クオリティの向上、そして実質的な業務効率の改善が可能になるはずです。

ただし、いくら繰り返しが前提といっても、単にだらだら、特に明確な意識や理由もなく繰り返しているだけだとおそらくいつまでたってもZone状態は経験できません。

これはある意味、スポーツ競技におけるトレーニングの場合と同じです。

そこで、まず定型的な業務について意識的に「Automatic化」する必要があるわけです。しかも、それをできるだけ上手く、つまり最短のスピードで、負荷が少ないにもかかわらず最適な完成度で行うためには……とごく意識的に、論理的に考え抜いた上で、その実現のために繰り返しトライする、という意識で行います。

そうすると、ある時からいわゆるZone状態が発生します。今度は、同じ流れを実行するとかなり高確率で必ずZoneに入るということが体感として分かってきます。そっちの方がふつうになってきます。

個人レベルでの業務効率は、単に作用の順番の入れ替えたり……という理屈の上での計算だけではない、個別の能力アップとか生産性の向上といった観点をも活かすことができるのが最大のメリットであり、特徴だと思います。

忘れてはならない「Dynamic」の感覚

もうひとつお伝えしたいのは、一見先ほどの話と矛盾するように感じるかもしれませんが、

「Dynamic」

という言葉で言い表されるような概念です。

つまり、自分の仕事を常に

「動的なもの」

と捉えることです。

たとえば毎日のスケジュールやタイムテーブルの一部をあえて流動的にしておくことが考えられます。

もちろん職種の特性によっては厳密さや正確さを優先することもあると思いますが、一般的な業種の多くは、現実、突発的な変更や、自己都合を優先したりする場面がしばしば発生します。

その場合、初めから仕事というのは本来「Dynamicなもの」「動的なもの」だという前提でいるほうが心理的に対応しやすく、ストレスが少ないです。

私は通常

「〇時から〇時まで、この作業」

というようなスケジュールを決めることは極力しません。人と会う約束など、どうしても時刻を指定しなければならないことももちろんありますけど、その場合にはその前後の業務自体をずらしたり、別の日に動かしたりすることもあります。

その代わり、通常は一日の中でする作業の量と、実施する順番だけを決めます。順番を固定するのは主には業務抜けを防止するためと、いちいち何度もタスクリストやスケジュールを確認し直すとか、意識に入れとくのが面倒くさいからですね。

ちなみに、前に述べた定型業務の「Automatic化」についても、たとえば自分の仕事を全部「Automatic化」しようとするのは通常逆効果になります。

一日のタイムスケジュールなどをすべて緻密に決めるタイプの人もいますが、私は原則、それよりも常に自分の動きそのものを動的なものと捉える意識のほうに重点を置くようにしています。

その通りに事が運ぶことを理想と感じていると、イレギュラーな事態が起こるたびにストレスが蓄積すると同時に、そもそも

「なるべくイレギュラーがないこと」

を望むような心理に傾き始めると多くの仕事はクオリティが下がる傾向があります。

この面から、実は「Automatic化」は、自分の全業務を一律に当てはめようとすれば必ず支障が出ます。ですから、むしろそうではない部分を明確に分けておくことで効果を発揮します。

また、これは別に毎日決まった時刻に開始することにこだわる必要も実はありません。一日の中で何時から始めようと同じことです。ただ、それに手を付けたらもう「Automatic」に流れのままに完結するところまで一気に行うという習慣を作るのがポイントです。