考える力を付けるには?

考える力を付ける、というと多くの人はすぐに

「思考法」

のことだと考えると思います。

もちろん、具体的な思考の方法論というのも大切であることは間違いないのですが、実は多くの人が見落としがちなのはむしろ、ものを考える前提となる準備です。

  • 何について考えるか?
  • どこで、どんな状態で考えるか?

を意識するということです。

実際に考える力をつけるには、思考法とかフレームワークといった各論に入る前に、いわば

「思考の作法」

を身に付けるのが近道です。

何かをじっくり考えたい場合

いつも、

「いずれじっくり考えないといけない」
「今度、時間があったらゆっくり考えよう」

と、様々な問題について意識していながらもなかなかできないというような場合、多くの人はその理由を

「時間がないからだ」

と考えます。

しかし、実際に時間ができた時には

「何について考えるんだったか……?」

ということを考えているうちに、時間がなくなってしまうのです。

あるいは、考えるべきことが明確でないと、いろんなことがランダムに思い浮かんで整理が付かなくなって、面倒になってやめてしまいます。

これでは仮に時間があったとしても事実上は無為に過ごしているのと同じ結果になります。

考えるべき内容をはっきりしておく

さまざまな思考法を学んでいたとしても、実際にそれを使い続けなければ思考のスキルを自分のものにすることはできません。

ですから、まず常に、自分は

「何についてどう考えたいのか」

をはっきりしておく必要があります。

それをいつでもすぐに取り出せるように工夫しておくのです。

これは思考の準備です。

その準備が整っていて初めて、実際にものを考えることができます。

場所の確保(考えるためだけの場所)

  • 何について考えるか?

をはっきり準備しておくことと同時に、考える場所を決めておくことをおすすめします。

もちろん、まず空間的に、どこで考えるかを決めておかないといけません。

自宅でも良いのですが、その場合には意識的に考える場所とタイミングを考えておかないと、自分がせっかく何かを考えようとしているのに家族が話しかけたり、雑用を言いつけられたりすることがノイズになって集中できなかったり、ふとしたことで考える気が失せてしまったりする可能性があります。

また、すぐ手近なところにスマホやパソコンや、好きな本や漫画などが置いてあったりします。

それが目に入ると、集中して何か大切なことを考えることよりも、とりあえずそっちに手を伸ばすことを自ら選んでしまう可能性が高くなります。

もし自宅に考える環境が作れないということになると、どこか別の場所を用意しなければなりません。

まあ実はどこでも良いのですが。

喫茶店、ファミレス、公園、あるいは電車の中……。

よく指摘されることですが、ひとつ言えることは、考えるための場所というのは、意外に

「不自由な状態」

であるほうが効果的だということです。

つまり、自分のしたいことが何でもできて、気分的にもくつろげるような場所だと、実際にはそのことを考える以外の別のことを選択する余地が多いということですから、集中しにくいのです。

極端に言えばむしろものを考えるくらいしかやることがない……というような状態のほうが良いことになります。

これも、思考の準備です。

考える時間とは?

すでに書いた通り、

  • 考える内容
  • 考える場所

を自分なりに決めたものとします。

あとは

  • 考える時間

さえ捻出できれば良いと考えるかもしれませんが……これだけでは本質的なことをじっくり考えることはできません。

その最大の理由は……あなたが、そもそも「ものをじっくり考える」という行為に慣れていないからです。

ある意味当たり前なのですが、見落としがちなことです。

これは、たとえばスポーツとか武道を始める場合のことを想像すれば容易に理解できます。

何の競技をやるのか自分で決めて(内容)、チームに参加したり、道場へ入門したりします(場所)。

……それで、その種目ができるようになるわけではありません。

それは準備が整っただけで、実際にはまだ何もしていません。

次には必要な道具を揃えて(ここがいわゆる「思考法」に当たります)、やっと実際に練習を開始することになるわけです。

考える前に自分なりの儀式を置く

実際に何かをじっくり考えるには、自分の身体や精神を

「思考モード」

に切り替えるような、ある種の儀式を使うと有効です。

たとえば、比較的手軽で実践しやすいものとしては

  • いったん寝る
  • 決まった雑用を行う
  • 風呂に入る
  • 決まった音楽などを聴く
  • 決まった飲み物を飲む

といったものが有効です。

あるいは、たとえば勤務中などに行うことを想定しているならば

  • 数分間瞑想する
  • 数回深呼吸する
  • 何もせずに数分間ガムを噛む

といったものでも良いです。

要するに何でも良いのですが、それをすると

「思考モード」

に入るというようなクセを付けるようにすると効果的でしょう。

でも、仮にそのようにしても、実は最初は、すぐに考えが進んだり、思考が整理できたり、良い案がひらめいたり……はしません。

つまり、ここからやっと練習に入れる状態になっただけですから。

よく、散歩中にアイディアがひらめくことが多いといった話を聞くことがありますよね?

これは、確かに一理あります。

仮に最初はたまたまそうだったのだとしても、その経験が何度か重なることで

「散歩しているときには、アイディアが浮かびやすい」

という解釈が自分の中に出来上がります。

すると、今度は意識的にそれを狙って「アイディアを出したいときには散歩をする」という行動パターンを利用するようになるわけです。

実際に「考える時間」は実は短い

たいてい、何かについてじっくり考えようという場合でも、実際にそのことを考える正味の時間は実はそんなに長く必要ありません。

「ゆっくり考える時間がない」

という人はたいてい、実際にはこの、思考に集中するための準備と、このような儀式に投じるべき時間が捻出できていないのです。

深い思考には慣れが必要です。

ドラマなどで、よく一流の経営者や政治家といった重責を負っている人が薄暗い部屋でデスクにひとり座って、じっと何かを考えているようなシーンがありますよね?

腕を組んで、目をつぶって……と思うと、いきなり大胆な決断ができている……みたいなシーン。

まあこれ自体は単なる演出かもしれませんが、でも、たとえばこういった人々は、それこそ考えることを仕事としているような人たちです。

要するに、物事をじっくり思考し、決断するということ自体に、非常に慣れているわけですよね?

おそらく、私たちがそれと同じことをいきなりしようとしても、最初からうまくいくわけではありません。

ものを考えるということには、ある種の訓練というか、やはり慣れや経験値が必要なのです。

ですから、上に書いたようなことを用いてまず

「じっくり考えるということは、体感的にはどういうものなのか」

を経験し、体得する必要があるわけです。

最初は、せっかくものを考える時間が確保できたのに、結局たいした考えも出ないまま時間をムダにしているような気がするかもしれません。

しかし、それは仕方のないことで、実は決してムダではありません。

まず、ものを考えるための、自分なりの型(パターン)を作り上げることに、ある程度の練習時間が必要なのだとあらかじめ思っておいたほうがいいです。

実際には、ものを考えること自体よりも、むしろそれに時間がかかるのです。

思考する場面は2タイプある

ちなみに、一口に「考える力」と言っても、実際には思考が必要になる場面というのは大きく分けて2つあって、私はそれを

  • 処理的思考
  • 本質的思考

と呼んで区別しています。

それで、今想定しているのは「本質的思考」のほうで、これはつまり

「何か自分にとって重要な、比較的大きなテーマについてじっくり考えたい場合」

の思考のことを指しており、今説明したのは主にこの場合のことです。

ちなみに、もし処理的思考(単純に、負荷が少なくスピーディに物事を処理したい場合の思考)について考える場合には、もちろん共通する部分も多くありますが、今の説明とは少し違う切り口が有効になると思います。


本【思考法】

その考え方はどうなのか

第1章 思考そのものに入る前の段階で、思考そのものをどう捉えるかを記述しています。第2章 処理的思考と本質的思考を区別した上で、その思考手順に見られる違いを考えます。第3章 個々の思考法や思考技術をどう取り入れるかを考察します。

PDF版(DLマーケット)