企業の目的は、あなたの目的じゃない

企業の目的とは何でしょう?

もちろん、いろいろに表現できます。

「企業の目的は、利潤の追求」
「企業の目的は顧客創造である」
「ゴーイングコンサーン(永遠に継続すること)」
「創業者の夢の実現」
「みんなを豊かに、幸せにすること……」

会社などの組織

どれも理念としては素晴らしい、輝かしい「目的」ではないでしょうか?

で、それは良いのですが……たとえあなたの勤める会社の目的がどう表現されようと、それは本来は、もともとを言えば

「あなた自身の目的」

じゃないですよね

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組織のすり替えメソッド ② 目的のすり替え

組織の目的そのものはたいてい非常に単純化した形で示されます。

社是、スローガン、今季の目標……どんな形であれ。

ところで、それと比較して、たとえばあなたとか私という一個人にとっては、たとえば

「自分の人生の目的」

とか、あるいは仮に

「仕事の目的」

と限定してみたとしても……それって実はなかなか単純に明確に言い切れるものではありませんよね?

だれもが常に明確な目的意識を持って暮らしていると考えるのは非現実的です。

それが一生に渡ってずっと明確であり続けると考えるのはもっと非現実的でしょう。

ただ、そのように仮にそもそもの自分の目的や目標というものがはっきりしない場合でも、あなたがひとたび組織の一員となれば、組織はあなたの意志とは無関係に、非常にもっともらしい、受け入れられやすい目的をはっきり示してくれます

これは必ずしも悪いことではなくて、むしろ多くの人にとってはありがたいです。

いわゆる「やりがい」です。

組織にとっての目的というのは、そこに所属する個人から見れば「やりがい」です。

そして、企業などが掲げる目的は、どんなに壮大なものであっても……その目的を別にあなたが一人で、自主的に統合的に、自分ひとりで達成しようと背負う必要もありません。

みんなでやればいいから。

会社は目標や計画を明確に掲げるだけでなく、その達成のためのディテールを幾重にも細分化して、所属する各自にかなり具体的に割り振って明示してくれます。

指令系統が明確に存在し、指示や命令も比較的はっきり与えられます。蓄積されたノウハウを用いることを許され、個別に指導や助言、協力を仰ぐこともできます。

こういった環境というのは、自分で目的を初めから考えて、自分ひとりで行動を起こして達成しようとする場合に比べて非常に有利ですし、実際に行うべき内容もかんたんになります。

つまり、組織の中で業務を遂行するのは非常にたやすいのです

しかも、実際には与えられたごく部分的な作業を恙なくこなすことが、まさに組織の大目的に貢献するということと同じ意味になります。ですから、望むなら大きな満足感も感られます。

ある意味ではこんなに楽しいことはありません。

しかしこれらはそれぞれの個人から見れば

「目的のすり替え」

です。

自分では手段だと思っていたことがいつの間にか目的となっているわけですから。

組織から受ける評価

組織内部にいる各人にあっては、昇給や出世などを通して組織内でより高く評価されることが是とされます。

あえてこれに理屈を付けるとすれば、その組織の内部では、指令系統上より上位にある人は組織の目的の達成についてより直接的に影響を及ぼす立場と見做されるから「偉い」のです。

すると、組織に所属している各自にとっては、今度はそれが目的化していきます。

これも別に必ずしも悪いことだと言いたいわけではないです。むしろこれは組織というものの非常に価値のある、喜ばしい特徴だとも言えるわけですが……しかし、現象として

「目的がすり替わっていること」

は明白です。

個人と組織の軋轢

ところで、一方では

「組織に甘えたくない」
「自分に何ができるか試したい」
「自分自身の実力を高めたい」

とか考えている人も多くいると思います。

組織に頼らない生き方とかアントレプレナーシップとか……また、最近は年代を問わず自立心、独立心を是とする価値観も浸透してきています。

もちろん、そうであってもやはり企業に就職する道を選ぶ人は少なくないわけですが……。

特に、あらかじめ自分なりの目標とか、目的意識や意志を持って組織に属することを選んだ人は、その、そもそも自分が持っている動機や意思と、組織から与えられる目的との間に常に【インテグリティ(整合性)】を考慮しなければなりません。

もしそこにうまく整合性を見い出すことが難しい場合……たとえば組織の目的に合わせて自分の目的を変更するか、組織の目的を本心から受け入ることなく建前を演じるか、またはあくまでも暫定的なものと割り切って期限付きで組織の目的遂行に徹するか、といった何らかの回避策が必要になるわけです

もちろん、実際にそこでの仕事や活動を通して当初の考えが変わってくることも十分あり得ます。

それが良いのか悪いのか……それは個別の問題ですが、いずれにしろ、ダブルスタンダードの状態を長期に自覚的に継続することは非常に難しいです。

人間はふつう、単純に一つの目的を想定してそれに集中して行動するほうが容易だから、そういう状態は人間の自然な心理に反しているわけです。

また組織は個人の自己実現についてのモチベーションを必ずしも促進しません。

仕事の目的を探す

逆に、当初はたいした目的意識も何もなく入ってきた人が、仕事の進め方や特定の業務に精通するにつれて自分自身の目的らしきものが見え始めるという順番もあり得ます。

より自分の可能性を広げるために、もっと積極的に学ぼうというような気概も出てきます。

ただし、組織に属していれば内部的には常に組織の目的を優先するような圧力下に置かれていますから、そこから逸脱する個人的な目的を優先させるという方向に変化することは難しいです。

また、組織の中で学べることは常に組織に有利なように一種のフィルターがかかっています

本人さえ気がつかないまま組織の目的がまるで自分自身の目的であるかのように思い込んでしまうことが往々にしてあり得ます。

これは避けようとしたところで実際にはかなり難しいことです。

また本来組織に属しているのだから、それを避けることのほうが間違っているという理屈も成り立ちます。

組織野中にいる間は組織の目的達成を中心に考えることを避けてはならないというほうが正論なわけです。

自分の目的らしきものが見え始めたと思ったときにはこんな点をよく考え直してみる必要があるではないかと思います。

自分で考えられる社員とは?

入社時に

「自分で考える社員になってほしい」
「むしろ独立精神を養ってほしい」

というような訓示を聞かされる人も多いでしょう。

意気込みとしては理解できます。

しかしこういった話を聞いてもこれを額面通りに受け取るのはもちろん危険です。

実際と言うと、多くの組織が求めている

「自分で考える」

とは、事実上

組織の目的を最も効率的に達成するために自分でも考えてほしい」

という意味です。

その組織に関係ないことを考えろというのではないのです。

もちろん、中には例外もあり得ます。

本当に親身に一人ひとりの成長や自己実現を優先してくれるような気構えと、そのための正しい技術を持っている上司や先輩に出会うかもしれません。

また、たしかに昨今の傾向として、本当に額面通りそういった精神を社是とするような企業も出現してきてはいます。

しかし、全体としてそれはごく少数です。

また、理念としてはそうであっても、中にいる全員がその意思を正しく認識しているとも限りません。

組織から見れば、自分の望みや目的などというものは脇に置いてひたすら組織の目的達成に邁進してもらったほうが好ましいのは自明のことです。

ですから上から下から真ん中から……結局は常にそういうバイアスがいつも働いているという前提で考えなければならないということは覚悟しておかなければなりません。

そこで、何とか目的の整合性を保とうとしたり、ある程度妥協したり表裏を使い分けたり……と自分なりに試行錯誤することになるわけです。

しかし……何%かの人は、結局は組織に依存していることの不合理を悟ることになるわけです。

組織に属している間に、自分の目的との乖離が明確になってくると強い不満や反発を感じて組織と決別したいという欲求が募ることがあります。

また、もちろん最初からそのつもりで組織に属している人も多数います。

しかし、その中で実際に自分自身の本来の目的のために行動を起こせるのは全員ではありません。

何割かの人は

「私もいつかは独立して事業でも起こしたいなあ」

とか言いながら具体的には何もしないまま現状維持します。

実は自分でも分かっているのです……実際に組織を捨てて独立したり、または自分を頂点とする新たな組織を作ろうとしたりする意思などないことを。

こういう人たちにとって組織に属していることはいわば

「永遠の暫定」

なのです。

ここで、組織にとって調達可能な人員というのは次の3つのタイプがあるということにが分かります。

つまり

① 自ら組織に依存しようとする人
② 組織を積極的に活用し、しかる後去ってゆく人
③ 永遠の暫定にとどまる人

です。

組織のすり替えメソッド ③ 対価のすり替え

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