業務効率化の方法論、個人から見た場合のポイント

業務効率化という言葉から私たち各個人がイメージするものはなんでしょう?

よくある話ですが、業務効率化をしようと思って改善を試みた結果、以前よりもかえって仕事がはかどらなくなったり、協力や連携が取りにくくなったりする例は非常に多いと思います。

これは、個人単位で考えてもそうですし、全体で見ても結果的に「改悪」だと思われる場合は少なくありません。

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なぜ会社の業務改善はいつも的外れに見えるのか

「業務効率化」とか「改善提案」という話をすると、頭から否定的に受け取る人すらいます。

効率化とか改善とか、言葉は聞こえがいいけど、結局は上司や経営陣から強制されるもの。現場を知らない人間が理屈で考えた改善なんて、失敗するに決まってる……というような観念を持っている人もいるでしょう。

改善、効率化

私たちは日常的にも、現状の業務手順やルールについてよく

「絶対こうやったほうが早いよね!」
「本当ならこういうやり方にしたほうが効率的なのに……」

というふうに意見を持ったり、批判したりすることがありますよね?

逆に社内ルールや業務フローが何らかの理由で変更された時にも

「なんでこんなやり方になったんだ?」
「前のほうが良かったよな……」

とか、不平不満を持つことがあります。

しかし、そんな時、仮にそれを上司や意思決定者に言ったところで、その意見がそのまま通るとは思えない場合のほうが多いですよね?

私たちはそれを経験上知っているので、たいていの場合正式に反対意見を述べたり、自分の意見を提案したりはしません。ただ、仲間内で愚痴を言うだけなのです。

なぜでしょうか?

「上の考えることは分からんな……」

こんな言葉があるように……なぜ、規則や手順を「決める人」の気持ちと、それを実際に「行う人」の考えはいつも食い違うのでしょう。

みんなが勝手に「目的」を想定しているから

業務効率化やリストラクチャリング、業務フローの改革、改善といった活動について不満が起こりやすい理由の一つは、それぞれの人が思っている「目的」が、バラバラだからです

業務改善というのは常に何らかの意図や目的があって、それに合わせて現状を最適化するために行います。

たとえば、業務の効率化という場合、それはあくまで全体の効率を今より引き上げるという目的のためにするのですが……そこで言っている効率というのは、多くの場合結局は

「コスト」

です。

つまり、この場合の効率化は、

「最もコストがかからない方法にする」

という意味です。

しかし、実際にその業務に携わっている人が考える「目的」というのは、たとえば

「もっと楽でスムーズなこと」
「負担やストレスを軽減すること」
「満足感や達成感を得やすくすること」
「不公平感をなくすこと」
「もっと待遇が良くなること」

……とか、たとえばそういうさまざまな意向を含んでいます。

何か一つの目的に沿って最適化すればするほど、当たり前ですけど

「別の目的に照らせば最適じゃない」

部分を含むことになってしまいます。

これは、国とか行政とか法律とか、または企業全体でも部署ごとでも、個人個人でも……どのレベルでも同じです。

「改善」は普遍的ではない

言葉の問題ですが、業務効率化、あるいは業務改革とか改善という言い方をしますが、それは実は非常に理念的な言い方です。

ごくふつう人は

「改善を繰り返していれば、長期的にはだんだん良くなるはずだ」

というイメージを持ちます。

もちろん、改善というのは辞書的な意味ではその通りなので、だれもがそう考えるのは当然です。

しかし、実はこれは、そもそも

「何が良くて、何が悪いのか」

という基準というか、方向性がすでに決まっていて、それ自体がずっと変わらず普遍であるという前提を置かなければ成り立たない理屈です。

あるいは、人類全体とか、世界、歴史とか……そのように抽象度を極限まで上げなければ語れないような代物です。

しかし、実際には会社などの経営方針とか、その場面場面での意思決定の条件とか問題意識の所在、重点の置き方……こういうものは、常に変わります。

意識して見ていると、これはけっこう「ころころ」変わります。

つまり、そもそも何が良いことで何が悪いのかという観点そのものが常に一定ではないわけです

ですから、その場合の「改善」「効率化」というのは、事実上は、

「単にその時に挙げられた特定の目的意識に合わせて最適化しているだけ」

……です。

人によっては、どこかに

「究極的な、最も良い方法というのが存在する」

という観念を持っているかもしれません。

業務効率化を考える際も、

「理論上、すべての面で最も効率の良い正解が存在する」

という前提で考える人がいるかもしれません。

しかし、私が思うに、そのような

「究極の正解」

はおそらくどこにも存在しません。あるのは単にその時点での

「最適解」

だけです。

はっきり言えば、業務のやり方なんて実際にはそれまでの経緯とか関係するいろいろな人の意向とかで結果的に今はその形になっているというだけのものです。

それを、ある特定の目的を取り出して、それに合わせて最適化し直すこと……これを一般に「業務効率化」とか「改善」という名前で呼んでいるのです。

あらゆる面を考慮して、すべてに関して理想的な改善の形というのが存在していて、よく検討すればそれを見い出すことができるなんてことがそもそもあり得ないのです。

個人として「業務効率化」にどう対処すべきか

……さて、私が言いたいのは

「ということは……自分自身の業務を見直すときにも、まずその目的をきちんと考えなければならないんじゃないだろうか?」

ということです。

つまり、これは何も会社とか部署といった「全体の話」の場合に限らないということです。

たとえば、私が今思いつく限りでも、自らが主体的に自身の業務を見直して効率化しようとする場合、その理由は、

① 時間を捻出したい
② モチベーションが続くようにしたい
③ 社内での自分の評価を上げたい
④ 特定の分野でスキルアップしたい
⑤ 限界を感じるので打破したい、または耐えうるレベルに収めたい

といったようにさまざまに存在するはずです。

目的意識を持つ意味

あるいは、

⑥ 自分というよりも社全体を変えたい
⑦ 上司や取引先など、関係者から改善を求められている
⑧ とにかく何らか改善したという報告をしなければならない

といった状況も考えられますよね?

いずれにしろ、自分自身の目的を改めて意識しようとすれば、たとえ個人レベルの業務見直しであっても、はっきり言って

「唯一の正解がある」

というほうが暴論に聞こえますよね?

実際にどう変えるかは、あなた自身の問題意識と目的次第ということになります。

あなたが、実は何をもって「効率化」と呼んでいるのか?

それを改めてよーく考える必要があるんじゃないだろうかと思うわけです。

個人の業務効率化のポイントは「心理的負荷の軽減」

業務効率化が失敗する要因はさまざまに考えられますが、ひとつ挙げておきたいのは、その改善方法はそれを担当する本人の心理的なストレスを軽減することに寄与するか……という観点を持つことです。

これは会社など組織全体で考えた場合にも当てはまりますが、今仮にあなた個人の範囲で自分の業務内容や手順、方法論を見直そうとしている場合でも非常に重要なポイントと言えます。

これに関して、個人レベルで私が意識している業務効率化のキーワードとして

① Automatic
② Zone
③ Dynamic

の3つのキーワードをご紹介します。

業務効率化のキーワード① 「Automatic」化

原則、業務改善の流れは個人の場合でも「ECRS(イクルス)」に沿って考えることができますが、それと同時に最近私が意識する業務効率化に関するキーワードとして

「Automatic」

があります。これはどんなことかというと、イメージとしては

「ここからここまでの作業は……なーんにも考えなくて半ば自動的にやっちゃうことにする」

ということです。特に毎日繰り返し行うルーチン的な業務は、まるで

① 朝起きて
② トイレに行って
③ 歯磨きして
④ 髭剃って
⑤ 顔を洗って
⑥ 着替える

……みたいな、いわば無意識に自動的に動くようなものにしてしまうということです。

別にこれは朝一である必要はありませんけど。

その種の業務は一日のどこかの時間帯で、気持ちの上での負担なく勝手に終わってる……というふうにしたいわけです。

で、こういった作業は一日に何度もバラバラ存在すると、それだけ周囲の状況とかイレギュラーな事態の影響を受けやすくなりますし、そうでなくても、たとえば一日の中で定時業務が何か所にも散在しているとその都度気持ちの切り替えに多少なりとも心理的負荷がかかります。

なので、効率化の面から言えば日々行うべき定型的な業務はなるべくひとつの時間帯に集約してしまったほうがいいです

ただし、これは必ずしも、毎日決まった時刻にやるということとは違います。定時化することをルールにすると、そのことが逆にストレスになる可能性もあるので私はおすすめしません

ただ、いったん着手したら流れで一気に全部終わらせるようにしておく、ということです。

業務効率化のキーワード② 「Zone」を作る

Zone(ゾーン)とは、主に一流のアスリートやスポーツ選手などが競技する際などに見られる

「非常に集中した状態」

のことを指しますが、単に一つの目的に意識が集中できているというだけではなくて、表現としては

「体が勝手に動く感じ」
「まるで時間が止まっているような感覚」
「自分の肉体や神経が極度に研ぎ澄まされている感じ」

といった体感を伴って通常では成し得ないようなハイパフォーマンスを発揮できる状態のことです。

もっと一般的に考えれば、スポーツなどの肉体的なパフォーマンスに限らず、たとえば

・音楽家や楽器演奏者が常人ではあり得ないような複雑な演奏を当たり前のようにできる
・小説家などが、まるで初めから出来上がっていたように短時間で作品を書き上げる

といった場合にも当てはまるでしょう。

あるいは、私たち自身もたとえば勉強や仕事などの場面でこれに近い体験をすることがあります。実際はだれでも、自分でも驚くほど集中できて、その時だけすごい成果を得ることができるという経験を一度や二度くらいなら持っている場合があると思います。

つまり、肉体的運動に限定しなくても、それと同様のハイパフォーマンス状態を発生させるという意味ではあらゆる作業や行為を対象としてZone状態は起こり得ます。

ただし、私たちの場合はこれがたいていの場合かなりランダムで、どちらかというと

「なぜか分からないけど偶然そういう状態が起こることがある」

……という認識であることが多いでしょう。

最近はこの「Zone」の状態を意識的に作るための方法論の研究も盛んに行われており、たとえば呼吸法とかルーティーンと呼ばれる儀式的な動作等を用いる技術が紹介されています。

Zone状態を起こす前提

ただ、私の実体験上の感覚から考えると、実は再現性のあるZoneを作るためには前提として

「日常的にその行為、動作を相当の頻度、回数で繰り返している」

ことが前提的な条件であるように感じます。

逆に言うと、たとえば毎日ルーチン的に繰り返している作業や動作については、私たちはある意味ごくかんたんにZone状態に持って行けるということを経験からすでに知っているのです。

たとえば、自分の仕事や業務の範囲で一定時間Zone状態を発生させることができれば、きっと大幅な時間短縮、クオリティの向上、そして実質的な業務効率の改善が可能になるはずです。

ただし、いくら繰り返しが前提といっても、単にだらだら、特に明確な意識や理由もなく繰り返しているだけだとおそらくいつまでたってもZone状態は経験できません。

これはある意味、スポーツ競技におけるトレーニングの場合と同じです。

そこで、まず定型的な業務について意識的に「Automatic化」する必要があるわけです。

しかも、それをできるだけ上手く、つまり最短のスピードで、負荷が少ないにもかかわらず最適な完成度で行うためには……とごく意識的に、論理的に考え抜いた上で、その実現のために繰り返しトライする、という意識で行う必要があります。

そうすると、ある時からいわゆるZone状態が発生します。

今度は、同じ流れを実行するとかなり高確率で必ずZone状態に入るということが体感として分かってきます。だんだんそっちの方がふつうになってきます。

個人レベルでの業務効率は、単に優先順位を付けたり作業の順番の入れ替えたり……という理屈の上での計算だけではない、個別の能力アップとか生産性の向上といった観点をも活かすことができるのが最大のメリットであり、特徴だと思います。

そして、人はZone状態に入っている間、自分がしている行為について心理的なストレスをほとんど感じません。

むしろ非常に快適な気分になることができます。

業務効率化のキーワード③ 「Dynamic」の感覚

もうひとつお伝えしたいのは、一見すると先ほどの話と矛盾するように感じるかもしれませんが、

「Dynamic」

という言葉で言い表されるような概念です。

自分のしている業務の範囲や、役割分担、それに得られる成果の限度などを固定的に考えないこと。つまり、自分の仕事を常に

「動的なもの」

と捉えることです。

たとえば毎日のスケジュールやタイムテーブルの一部をあえて流動的にしておくことが考えられます。

もちろん職種の特性によっては厳密さや正確さを優先することもあると思いますが……。

(※ここでの話は、一部の業種では当てはまりません。たとえば電車の運行とか、設備の監視、保全などに従事する当事者が、勝手に現場での作業手順や方法を変更、修正すること自体許されないでしょう。ただし、正式な手続きをもって提案することは可能かもしれません)

一般的な業種の多く、あるいは狭義で「ビジネス」と呼ばれるような範疇の事柄であれば、現実問題として、突発的な変更や、時には自己の利益や都合を優先したりする場面などがしばしば発生します。

そのような環境を前提に考える場合、初めから仕事というのは本来「Dynamicなもの」「動的なもの」だという前提でいるほうが心理的に対応しやすくストレスが少ないです。

イレギュラーを歓迎する姿勢と仕組み

私は通常

「〇時から〇時まで、この作業」

というように、一日のスケジュールをすべて時間で割り振るということを極力しません。

人と会う約束など、どうしても時刻を指定しなければならないことももちろんありますけど、その場合にはその前後の業務自体をずらしたり、別の日に動かしたりして、あえて空白の時間を作るようにすることもあります。

その代わり、通常は一日の中でする作業の量と、実施する順番だけを決めます。

順番を固定するのは主には業務抜けを防止するためと、いちいち何度もタスクリストやスケジュールを確認し直すとか、意識に入れとくのが面倒くさいからですね。

ちなみに、先ほども述べましたが、前に述べた定型業務の「Automatic化」についても、たとえば自分の仕事内容を全部「Automatic化」しようとするのは通常逆効果になります。

それは一般に「Routine(ルーチン)」と呼ばれたりもしますが、ルーチン化することと「Automatic化」することは、その意図がまったく異なります。

一日のタイムスケジュールなどをすべて緻密に決めるタイプの人もいますが、私は原則、それよりも常に自分の動きそのものを動的なものと捉える意識のほうに重点を置くようにしています。

なぜかと言うと、

その通りに事が運ぶことを理想と感じるようになるからです。

すると、イレギュラーな事態が起こるたびにストレスが蓄積すると同時に、毎日の仕事の自己評価そのものが

「予定通りに進んだかどうか」

という観点で自分の仕事を評価するクセがつくからです。

そもそも、なるべくイレギュラーがなく想定通りに業務ができたということを理想と考え始めると、実際には多くの仕事はクリエイティビティを失い、結果クオリティが下がる傾向があると思うからです。

この面から、実は「Automatic化」は、自分の全業務を一律に当てはめようとすれば必ず支障が出ます。ですから、そこに含める作業と、そうではない部分を明確に分けておくことが大事なポイントです。

また、一日の中で何時から始めようと同じことです。ただ、それに手を付けたらもう「Automatic」に流れのままに完結するところまで一気に行うという習慣を作るのがポイントなのです。

これを日々繰り返していると、Zoneの出現率が高まります。

だからこそ全体としてよりDynamicな行動、対応も可能になってくるわけです。

そして、自分の仕事を「Dynamic」を前提に管理していると……結局、最初に述べた

「目的や重点、問題意識が常に変化する」

という……そのこと自体に対応できるのです

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