人間関係とは

人間関係とは何か……を最も単純に言うならば、それは

「人間の、人間との関係のこと

です。

言葉で言うと当たり前みたいですが。

他者からの協力を得るひとうの有力な方法論は、

「自分がどう」「相手がどう」

あるいは

「組織の中での立場がどう」

といったことではなくて

「相手との関係そのものを考える」

ということです。

人間関係について

【例として、妻との関係について】

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関係って何?

ところが、この「関係」というもの自体が、そもそも得体の知れないものなのです。

「関係」というと、私たちはふつうたとえば友達なら友達、または恋人、配偶者、あるいは先生と生徒、上司と部下、先輩と後輩といった上下関係……といったものをイメージします。

だから協力してもらうには

「友達になればいい」

とか、あるいは

「組織の中で人の上に立てばいい」

とか思うわけですが、実は問題はその先です。

考えてみると、友達とか恋人とか、上司とか部下とか……このような呼び方は、ある関係に付けられた「名前」みたいなものです。あるいは「記号」と言ってもいいです。

関係に付いている「名前」「記号」に引きずられるとその本質を見失ってしまうような気がします。

それだと、結局は

「他人の協力を得るには、他人と協力関係を作ればよい」

と言っているようなものです。つまり事実上何の意味もないわけです。

実質的な問題は

「どうしたら協力につながる関係を発生させることができるのか」

です。

そこで仮に、あなたと、だれか特定の相手とが

「なぜ関係があると言えるのか?」

と聞いたら何と答えるべきでしょうか。

たとえば友達の場合であれば

「なぜあなたと彼は、友達だと言えるのか?」

という意味です。

すると、案外答えるのが難しくないでしょうか?

たぶん、まずふつうに考えられるのは

「それは、自分と相手がお互いに友達だと思っているから」

です。

でも、それならばですが……あなたが相手を友達だと思っているのは

「相手が意図してそう思わせようとした結果」

でしょうか?

そして、その場合、自分も意図的に相手に友達だと思わせようとしてふるまっていたのでしょうか?

だれでも自然に想像が付くと思いますが……互いがそんなことを意図して言動や態度を選んでいたとしたら、むしろ友達という関係になるのは難しくなってしまいますよね

当たり前なんですけど、ふつう友達になるのは

「自然に、結果的にそういう関係になった」

と思えることがほとんどだと思います。

するとそこには、自分と相手の、どちらも意図したわけではない、それなのに両者を互いに友達だと思わせている「何か」が別に存在しているのではないか

……ということが考えられます。

つまり、その「何か」が問題なわけです。

属している「場」

次に、さっきの質問に対する答え方としてもう一つ考えられるのは、おそらく

「学校がいっしょだったから」
「いつも行くお店で知り合って」

とか、または

「共通の趣味があったから」
「話しが合う気がしたから」

といった答えです。

ここで、あらゆる関係にとって重要なのは、自分と相手が属している

「場」

です。

つまり、どんな関係であれ、その関係を作るには前提として実体的または心理的な「場」が共有されているはずなのです。

今の例で言えば

「学校がいっしょだったから」
「いつも行くお店で知り合って」

というのはごく直接的な意味での、いわば

「実体的な場」

のことを言っています。

つまり、同じ集団とか団体、組織などに属しているとか、特定の同じ場所を利用しているとか、そういうことです。

また

「共通の趣味があったから」
「話しが合う気がしたから」

というのは、相手と自分に何かしら共通点があることを自覚しているということです。

共通点と言ったら「点」みたいに思うかもしれませんが、実際には「趣味」「好み」「価値観」などというものはその内容を詳細に見ていくとすれば、たくさんの共通点と微妙な差異をも含む

「情報の束」

のようなものと言ったほうが近いですよね?

実際に二人の間で交わされるのは、より具体的なたくさんの情報だったはずです。

自分と相手に関するさまざまな情報を総体として

「趣味が同じ」
「好みや価値観が似ている」

というように表現するわけです。

また、必ずしも共通しているからよいというわけではなく

「あの人はこんな特徴がある」
「私とはこんな違いがある」

というのも同時に情報です。

私は、おそらくこれらの情報の集積が「友達」とか「仲間」とか、つまりは「関係」を発生させていると思うのです。

そして、この互いにやり取りする情報の集積自体が、ひとつの「場」だと言えるだろうと思うのです。これは実体的な場ではなく、要するに

「心理的な場」

です。

つまり先ほど言った「何か」、つまり自分と相手の、どちらも意図したわけではない、それなのに両者を互いに友達だと思わせている「何か」というのは……お互いが知り得た無数の情報が作り出す「心理的な場」です。

お互いが主観的に、ある場合にはかなり無意識的に選択し、共有していると信じている特定の情報で満たされた「心理的な場」が、人間関係というものの正体です。

人間関係とは、心理的な場を介して意識される状態のこと

人間関係とは、

「自分」
「相手」
「その間にある心理的な場」

この3つが結びついて作り出すある状態のことなのです。

たとえば、友達というのはその3つによって成り立っている状態についている名前です。

ですから、もしずっと友達と呼び続けるとしても、3つのうちのどれかが変化すると状態すなわち関係はそれに従って微妙に変化します。

前に述べた【私と妻との例】でも、お互いが「配偶者」という関係の名称は変わりません。

でも、付いている名前は変わらなくても、互いが意識する心理的な場に含まれる情報が追加されたり、状況によって変化したりすると「関係」には実質的な変化が起こるのです。

私と妻とは、それが協力的になる方向に変化したから、その時はまあよかったわけです。

しかし、もちろんその変化というのは必ず良い方向に進む場合だけではありません。

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