スマートの法則とは、一般に
① S(Specific):具体的かどうか?
―これだけ! SMART(倉持淳子 著)より
② M(Mensurable):測定可能かどうか?
③ A(Achievable):達成可能かどうか?
④ R(Result-based):成果に基いているか?
⑤ T(Time-line):いつまでにやるのか?
という5つの基準によって、目標設定の妥当性を判断するものです。
5つの条件の一つひとつを見ると、それぞれは実はどれほど目新しい要素ではなく、ビジネスやコンサルティングの現場でしばしば指摘されるようなことばかりに見えます。
ただ、スマートの法則そのものはジョージ・T・ドラン(George T. Doran)によってこのような
「SMART」
な形にまとめられたことで広く一般に普及しました。現在はより応用的な適用の仕方もいろいろ紹介されており、個々の表現にも多くのバリエーションがあります。
達成可能であること?
スマートの法則によれば、目標というのは
「Achievableであること」
つまり、それを達成できるということがあらかじめはっきりしている必要があるのですが、では実際に私たちが立てる目標は常にその条件を満たしているでしょうか?
……実は、とてもじゃないですが、そんなことは断言できないのではないでしょうか?
目標の出どころ
想像してみることにします。
もし、あなたが会社などに勤めているとして、もしも一見して絶対達成できそうもない営業ノルマや必達目標みたいなものが決まってしまったら、あなたはどのような反応をするでしょうか?
そうですね……もし私だったら、建前としては
「達成できるように最大限努力しまーす!」
と一応言うかもしれませんが、内心では
「こんなの、できるわけないだろ!」
と悪態の一つも吐きたい気分になるでしょう。
その日は同僚を誘って飲みにでも行きますか……。
「あんなムチャな目標、どうやって達成しろって言うんだよ、なあ?」
と同僚に同意を求めます。同僚が
「だよなあ。会社はぜんぜん分かってないよなあ」
と同調してくれれば一安心、といったところですね。
つまり、この場合には私は
「Achievableであること」
は目標設定の必須条件であって、それを満たしていないような目標を強要する会社のほうに当然問題があると考えているというわけでしょう。
自ら立てた目標は、Achievableであるべきか?
でもですね……自分自身が自らに課そうとする目標についてはどうなんでしょうか?
逆の面から言うと、自分で立てた目標が
「Achievableである」
ということは、今の自分でも十分できるような程度のことだという意味になります。
しかし、もしそうならばその目標をあえて設定した意味は?
たとえば、多くの人が毎年のお正月に「今年の目標」を考えると思いますが、それがすでに
「Achievableである」
ようなものである必要性はあるでしょうか?
極端に言えば、そうなるとそれはもう「目標」ではなくて単なる「予定」にすぎないということにならないでしょうか?
多くの人は、なぜ目標設定を自らしようとするのかと言えば
「現状をより良い方向に変えたいから」
「将来的に実現したい夢や願望があるから」
「今の自分をもっと成長させたいから」
「自分の可能性を今より広げたいから」
……です。
そうでなければ、目標など基本的に必要なくなってしまいます。
単に計画や予定を立て、それに沿って着々とできる範囲のことを実行していけばいいだけなのですから。
繰り返しますが、スマートの法則は
① S(Specific):具体的かどうか?
② M(Mensurable):測定可能かどうか?
③ A(Achievable):達成可能かどうか?
④ R(Result-based):成果に基いているか?
⑤ T(Time-line):いつまでにやるのか?
の5つの基準です。このうち、
③ A(Achievable):達成可能かどうか?
という条件を除けば、これらはほぼどんな意味での目標に対する場合でも均しく当てはまるでしょう。
目標はいかなるものであれ
「具体的で」「測定可能で」「成果に結び付くもので」「期限が明確である」
べきであるというのは基本的にその通りです。
……ただし、唯一
③ A(Achievable):達成可能かどうか?
という点に関してだけは、私たちはその意味をよくよく吟味する必要があるのではないでしょうか?