メタ思考に関して私が常々気になっていた点は
① 抽象的な思考に比重を置くことはむしろ決断力や行動力、物事を具現化する意欲を抑制するのではないか?
② メタ思考などの思考作法を得意とするほど、周囲の他人との協調や共感が難しくなるのではないか?
……ということでした。
「メタ思考トレーニング―細谷 功 著」
を読ませていただき、上のような問題に対する大きな気付きが得られましたので、これはぜひおすすめしたい本です。
- 「それは在る」を読んで思ったこと
- 「思考停止という病」を読んだときに思ったこと
- 「超雑談力」を読んだとき思ったこと
- 「苫米地英人の金持ち脳」を読んだとき思ったこと
- 「リフレクション-内省の技術」 を読んだとき思ったこと
- 『理想の人生をつくる習慣化大全』を読んで思ったこと
なぜメタ思考が必要なのか?
「メタ思考」という言葉そのものはかなり以前からありましたが、なぜメタ思考がそれほど重要視されるのかということについて私自身も以前はあまり深く考えていませでした。
そもそもメタ認知とかメタ思考というのは人間がごく自然状態でも日常的に行っている精神活動で、文明の発達とともにその比重というか使用場面が増えることになるという認識は持っていたものの……
「意識的に使えたほうが頭いいんじゃないかな?」
くらいのイメージしか持っていなかったのです。
ところが、昨今の状況に当てはめて考え直してみると、
① 既存の知識や習慣に囚われない新発想やイノベーションのニーズが飛躍的に増大しているし
② AI(人工知能)の発達が目覚ましく、人間だけにできてAIにはできない……というものがどんどん減っている
という観点からメタ思考の意図的な駆使というのが多くの社会人にとってむしろ必須のリテラシー、前提的な思考スキルとも言える時代へと突入しているのではないかという
「必要性」
というより
「危機感」
を持たなければならないのではないか……という気さえしてきました。
AIの発達によって人間の仕事がどんどん奪われるというような話題がよく取り沙汰されますけど……私たちはまだ、そうは言っても
「感情に訴える能力」
「コミュニケーション力を要する活動」
といった領域は人間にしかできないことで、AIには不可能だとイメージしていませんか?
しかし、筆者はその幻想を見事に打ち砕いてくれます。
人間に残る最後の砦は
この本では、人間に固有の(同時に今後必須の)唯一最後に残る能力とはズバリ
「仕事自体を作り出す能力」
だと言っています。
言われてみればまったくその通り……同意せざるを得ない。
ところが、こういった点に鋭く気が付けるのもまさに
「メタ思考のなせる業」
なのだということがこの本で分かります。
「アナロジー思考」とは「類推と比喩」のこと
アナロジー(Analogy)とは一般的にいうと「比喩」「たとえ」のことですが、もっと広げて言うと
「類推」
という語がぴったりします。
つまりアナロジー思考というのは、類推による思考過程を指します。
「Analogy」という語の成り立ちを考えると分かりますけど、これは要するに「ロジック(Logic)」の反対なんで、ある種の飛躍を含んだ非論理的な思考の仕方という特徴があります。
だからこそ、通常の思考の流れではなかなか生み出せないような
「飛躍的な発想」
「斬新なアイディア」
を得ることが可能なわけですね。
で、アナロジー思考には前提的に
「抽象化、抽象的思考」
と
「具体化、具体的考察」
の間を行ったり来たりする一種の思考技術が必要なわけですけれども、筆者がそのコツとして特に強調しているのはむしろまず個別の事柄や現象について
「超具体的に捉える」
こと。
私は、何となく抽象的思考が得意だったらアナロジー思考なんて楽勝……みたいに短絡的にイメージしていたのでこの点は本当に納得させられました。
思考の腕力、体力、持久力が鍵かも
この本を読んであらためて思ったのは、そもそも思考に関するある種の
「基礎体力」
みたいなものってすごく重要だなということです。
スタミナというか、思考という作業になれていること、それが苦にならないような、思考の負荷に耐えられる力です。
いくらメタ思考トレーニングをしてそれについて理解できたところで、実際にそれを筆者が言うようなレベルで現実的に活かすには
「よっぽど物事を本気でしっかり考えないと無理!」
……という印象を持ちます。
たとえば
「ああ、これってこういうことでしょ?」
という思考回路じゃダメです。たぶん。
具体的なメタ思考トレーニング場の注意点として筆者が挙げている点は簡単に言うと
① 自分につっこっみを入れる
② 疑ってかかる
③ 自分だけは特殊だ病から脱却する
といった点ですが、私が勝手にそれにもっと前提的な点を付け加えるなら
④ むしろ物事の「特殊性」や「個別具体的な事柄」に注目する視点を持つ姿勢
⑤ 思考自体に耐えるスタミナ、忍耐力、集中力を養う
というような、言ってしまえば当たり前みたいなことですが、事実私たちには
「分かっていてもなかなかできない部分」
を根気よくまじめに……思考することだと思います。
アナロジー思考を現実に活かすルール
そこで、アナロジー思考を現実の問題に活かそうとする際に、私は特に次のようなルールを自分に課すのが良いと思います。
① 前から気付いていたことや、すでに知っているものが浮かんでもそれは除外する
だって、それじゃ考えたことにならないですから。
今までまったく思ったこともないようなことを思い付くまで考えるのをやめてはいけないのです。
② ひとつの発想やアイディアが思い付いても、もっとないかさらに考える
何か一つ良いアイディアが浮かんだら、もうそれで安心してしまうようでは浅い思考しかできないでしょう。
他にもっとないか……少なくともあらためて選択できるくらいの複数の案を出し尽くすまでは考え続ける必要があると思います。
……つまり、重要な点はむしろ
「思考しているようでいながら事実上思考停止しているのと同じ状態」
を自覚し、それを回避するということです。
これはおそらくむしろ
「自分はそこそこ頭がいい」
「自分には一定の思考力はある」
……なんてタカをくくっている人こそ陥っている罠なのではないでしょうか?
以上のように一段上の気付きをたくさん与えてくれる良書ですので、特に
「メタ思考とかアナロジー思考とか……いちおう理解してるよ」
とか思っている人におすすめしたい本です。