もちろん、仕事として「段取り」を専門としている方だったら段取りのプロフェッショナルになることが求められますよね?

プロジェクトリーダーのような立場の方や作業の工程管理を専門としている方など、それはもう「段取り自体がメイン業務」ですからね。

ですが、特に仕事上そのような立場ではないとしても、どんな職種であれ段取り力は必須の基本的なスキルで例外なく高めるべき力となります。

段取りとは単なる準備ではない

段取りというのは単に「準備する」という範囲のことでは語り切れないものです。

とはいえ基本的な点から言えば、まず自分自身の日々行っている業務について自分自身が管理すること、その全体像を掌握してコントロール下に収めることから始める必要性があるでしょう。

一日の中で段取りを組み、その通りに仕事が進んだかどうかを振り返る。

これをまずは一日というスパンで何度も練習をする……言葉にするとごくかんたんなことのように思えます。

ただ、現実に習慣にできていると自信を持って言える人はたぶん限られるでしょう。

段取り力は積み重ね

仕事で求められる段取り力というのは実際にはタスク管理とか整理整頓とか、そういう日常業務的な範囲のことではありません

ただ、それは段取り力を高めるための初歩であり、同時に

「段取り力を高めるための基本」

が含まれています。だからそこから始める必要があります。

あるいは、上司などから

「君はいつも段取りが悪いんだよね」

とか指摘されている状態だとすれば、そういった点から見直すのが最も近道だと思います。

段取り力は能力あるいはセンスや人柄によって先天的に差があるようにも見えますが実際はほとんどが経験と学習によるもの、そして繰り返しと習慣によるものと私は考えます。

ですから、基本的な考え方やコツのようなものを知ったからといって実際にはすぐにできるというものではないのです。

ただし、同時に段取り力というのは根本的には相手に対する配慮とか思いやりがあるかどうか、また仕事に対する責任感や使命感や意気込み、やりがいを感じているかどうか……といった部分から大きな差が出ます。

単なる技術論、テクニック論だけでは大きな改善が望めないこともあります。

もしかすると上司からとかこんなふうに言われることがあるかもしれません。

「君ね、段取りっていうのは、結局は思いやりなんだよ」

って。

これは間違った指摘ではありません。

その上で、段取り力を高めるために継続的に意識すべきことを挙げてみます。

抽象度を揃えて、俯瞰する

まず、取り掛かろうとしている事柄の全体像を、いくつかの階層に分けてイメージを捉え直しましょう。

この整理がしっかりできていないと全体像がぼやけてしまいます。

いわゆる「大局観」というヤツですが……これは単なる体感的なものではありません。

全体として物事を、たとえば

「目的」

「戦略」

「戦術」

「行動」

というように4階層に分けて考えます。

できればエクセルなどでかんたんな表など目で見える形にしておいたほうがはっきりします。

「目的」と言っても、仕事にしろ何にしろ多くの物事は単一の、唯一の目的だけを持つものではない場合も多いです。

また同時に制約条件がいろいろ付随していることも多いです。

つまり目的自体にもある流れや分類が想定できるでしょう。

目的に基いて戦略が現れます。そして戦術が決定され、最終的には実際の行動に落とし込まれます。

構造を先にイメージする

……といっても、このように目的のほうから順繰りにブレイクダウンして実行にまで落とし込むというのは、実のところ理念的には理解しやすいですが現実にはうまくハマらない場合が多々あります。

特に会社など組織単位でプロジェクトやイベントを管理遂行するというような場合、現実には関係者の意向などの諸事情によりなぜか具体的な個別の条件や戦術的な部分だけが一部だけ先に決定されていたりします

それらをも汲み取った全体像を描かなければならないということになります。

このような場合には特にですが、そうでなくても実際に考える際には必ずしも

「目的」

「戦略」

「戦術」

「行動」

という順番で考える必要もありません。

そのようにしようとすると実際にはむしろ見落としや錯誤が生じやすいです。

なので

「先に表ありき」

で、それをその事柄の「全体構造」と捉えて、穴を埋めるようにして必要な事項を見つけ出してゆくような方法のほうが有効だったりします。

構造のほうから具体的な項目にアプローチするわけです。

絶対必要なことと、どうでもいいことを分ける

ふつうに言うと、優先順位(Priority)とか

「選択と集中」

というふうに表現されることが多いと思います。

これは要するに、絶対的に外せないこと、つまり必須の事柄とそれ以外のものを区別しておくというのが実践的な意味になるでしょう。

で、特に最初は区別しにくいかもしれませんが、私が特に感じるのは現実の仕事の場面ではしばしば

「この仕事の中で、客観的に見て、あるいは目的に照らして絶対必要なこと」

というのとは別に、

「自分の中で(つまり自分のキャリアのため、あるいは自分自身の将来のため、成長のため……というような意味で)絶対入れておきたい部分

というのがあるということです。

このことは長期的に見ると意外に重要なコツだと私は感じます。

たとえば、恒例の社内行事や年次で繰り返し行われるような業務をもし無難に遂行することだけを考えれば基本的には前例を調べ、それに沿って進めるのが最もスムーズでノーリスクということになります。

しかし、そこに何かしら自分自身の問題意識や発案を盛り込もうとすればどうなるでしょう?

それは自らが絶対に挑戦したいことであると同時に、自ら入れたからには絶対に失敗させられないことにもなります

こういう点を盛り込むことが自分の意欲にも影響しますし経験値にもなるでしょう。

常に何事もなく無難に完了することだけが良い段取りであるとも限りません。

……と言っても、常に自分の意思や、自分にとってのメリットばかり念頭に置いて仕事をするというわけでもありません。当然、条件や環境によっては全体の目的達成のために自分が入れておきたい部分を捨てるという選択もあり得ます。

ただ、まず区別するというのが重要です。

そして、その辺のさじ加減をどう持つのが一番よいか……それこそ生きた経験にもなるわけです。

仕事というのは、短期的な成果も大事ですが、長期的に見るとむしろ

「仕事そのものに求められている需要」
「各ステークホルダーが期待している成果」

と、

「自分自身の感情やモチベーション」
「自分自身にとっての仕事の意味付けや価値観」

などとの一致点を見い出し、折り合いをつける価値観や考え方といった面がむしろ重要になってくるはずだからです。

未知の要素に対処する心づもり

段取り力に限りませんが、最初に完璧に作り上げようとする心理に陥らないよう意識するべきです。

「人事を尽くして天命を待つ」

と言いますが、その心づもりを忘れないことです。

むしろ、今性急に決定しないほうがよい問題や、暫定的な予測に基いてあまりにも細かく計算しつくした計画を立てようとすることがかえって無理を招いたり、非効率だったりすることもあります。

逆に言って、自分のスキルや経験値が上がってくれば、以前は予測が不可能だったような点にさえある程度妥当な予測が成り立つことが次第に見えてくるでしょう。

……この辺の勘所を経験に照らして把握していくことこそ段取り力を高めるうえで一番のコツだと言ってもいいかもしれませんね。

なぜ段取りが悪いと「仕事できない」と言われるのか

「よい仕事にはよい段取りがある」
「段取り八分、仕事二分」

……実際のところ、本当かどうかは別として少なくともビジネスシーンで関わる多くの人々が前提的にそう思っているというのは間違いないです

たとえ他者と関わらない自分の業務範囲のことでさえ、いつも段取りをきちんとしてそれに沿って仕事している人の仕事ぶりは周囲から見ていても余裕があり安定感があるように見えます。

今何をしているかが周囲からも分かりやすく気持ちがいいのです。

ある面ではレッテル貼りにすぎないと考えることもできますが、どちらにしろ自分の評価を落とし、周囲の協力を得にくい状況を作ってしまうとすればそれ自体が

「仕事できない」

という評価に結びついてしまうのですから仕方ありません。

また、本来厳密に言えば

「段取り力」

に含まれるかどうか微妙ですが、たとえば自分が段取りを任されたことを結果的に成功裏に完了させるための実行力や調整力、問題解決力といったものも重要になってきます。

結局、どうあれ結果的にうまく進んだ場合は

「段取りが良い」

という評価になる可能性が高いのです。

逆に言って結果的に問題が起きたり、その解決が困難な状態に至ったとすれば、それはやはり段取りの時点から問題があったと言わざるを得なくなります。

段取りが悪い人といわれるのは共有ができないから

ところで、仮に自分自身の範囲で業務のコントロールやタスクの管理を徹底できていたとしても、それがそのまま「段取りが良い」という評価にはつながりません。

また、行事やプロジェクトの段取りといった場合にも単に緻密で考え抜かれた計画を作り上げて発表すれば「段取り力がある」とも言えません。

つまり段取りとは、計画や準備といった面プラス

 「工程管理+根回し」

が伴って初めて発揮されるものです。

段取りが苦手と思っている人の中には、根回しや各方面への配慮といった面に強い苦手意識があったり、そういうことが嫌いだったりします。

もちろん、現実にはそれ抜きでは段取りは語れないことも事実です。

人間関係が面倒だと感じる人ほど段取り力を高めるべき

ただ、ひとつ考えられるのは、いわゆる根回しとか調整というと、すぐに

「人間関係上の問題」
「コミュニケーション力」

みたいなものが必要だと過剰に思い込むのも逆効果かもしれないということです。

もちろん、それが円滑にこなせるに越したことはないのですが、もし苦手だという場合には、段取り力として主に必要なのは必ずしも人間的に好かれるとかコミュニケーション能力が高いとか社交が上手という意味ではなく

「共有」

がポイントであると単純に割り切って考えればいいのではないでしょうか?

段取りにおいて主に重要なのは必ずしも社交や会話術、営業術といったものではありません。

まずは目的や意図、そしてその実行過程で起こる事実関係の「共有」です。

ある面で言えば、物事を進める際には個人個人の意向や意見に過剰に振り回されるのは良くないとも言えるのです。別に関係者全員の意向を矛盾なく反映させることが段取り力なのではありません。

ただし、関係する各人に適時必要な情報を共有してもらう必要はあります。

たとえば、計画を立てる場合にもあなた一人っきりで一から全部計画を立ててしまって、完成形だけをいきなり全員に発表したら、ふつうに考えて問題が起きやすいでしょう。

上司に指示や指導を仰ぐのはごくふつうだれでもしますが、それ以外の関係者にはすでに決まった結果だけを伝達するだけになってしまったり、個別の実行内容しか情報を提供しなかったり……といった不備が起こりやすいです。

「目的」

「戦略」

「戦術」

「行動」

という次元に分けた構造を可視化しておくと、その各次元において共有が必要な相手が見えやすくなります。

それを俯瞰しつつ適時情報を共有してもらうことを意識するだけで段取りは格段にスムーズになります。

必ずしも堅苦しく報告や伝達という形をとらなくてもよいのです。

ある時には指導を仰ぐ、または相談するといった体で、または単なる雑談としてはなしてもいいし、なんなら愚痴の形でも実は有効です。

そしてこの時に、先ほど言った「全体図」と言える可視化された表を作成しておくことが非常に役立ちます。

つまり、どの情報をいつだれに伝えたのかを都度記録しておくと進捗と共有状況が一目瞭然です。

目的と問題意識を共有しておく

できれば、単なる決定事項や事実関係のみならず、私が特にポイントだと思うのは関係する人たちに

「目的と問題意識」

をなるべく伝えておくことがひとつのコツだと思います。

もちろん、進行の過程で目的そのものから逸れて行かないようにするために、目的は繰り返し確認し合う必要があるでしょう。

それと、都度発生する「問題意識」の共有です。

万が一それが実際の問題になって表れてしまった場合でも、あらかじめ問題意識が共有されていただけでも受け止める各自の印象がぜんぜん異なります。

結局、先に共有しておくことが問題を防止することになるわけです。