「ECRS(イクルス)」とは業務効率化のための代表的なフレームワークです。
E:Eliminate(排除)
C:Combine(結合と分離)
R:Rearrange(組み換え)
S:Simplify(簡略化)
という流れで業務を改善しようとする方法論です。
ところが、このフレームワークは多くの場合、会社全体とか、特定の部署全体の問題解決の手法として利用されることが圧倒的に多いです。
個人レベルで「ECRS(イクルス)」を活用する方法
一般的には、たとえば部署全体での業務フローの見直しといった際に当てはめることが多いですが、自分自身に限っても、つまり
「個人レベルでの業務効率化」
を考えたい場合もこのフレームワーク自体はかなり有効だと思います。
ただし、そうするとちょっと迷ったりすることがあります。
やはり自分の現状をいきなりそのまま当てはめようとすると、どこから手を付けて良いかといった判断が個人では難しい面がありますし、具体的な末節な点をいろいろ思い巡らせているうちに考えが混乱してくるのです。
そこで、やはり一つには前に述べた「5W1H」の前提に従って、いったん全体を整理し俯瞰しておくことが有効です。
それによって自分の仕事の全体像、その構造と要素をはっきりしておきましょう。
それを踏まえてECRS(イクルス)の法則に従って検討するという流れがスムーズです。
その上で、ECRSの流れはまず
① Eliminate(排除)
ですが、これは個人レベルで言えば、言葉を変えればいわゆる「断捨離」ですよね?
もちろん、会社の業務となると自分の意向だけで勝手に「この業務は不要だ」とあっさり決めるのは限界があります。
少なくとも上司の了解を得たり、その意義を部署内で共有したりといった手間が必要になるでしょう。
しかし、実践上の排除の方法としては正式にその業務を廃止するというだけではなくて、
「後輩などに教えて引き継ぐ」
「いっしょに担当してくれる人を作り、さらに細分化して分ける」
「その作業の頻度を減らす」
「同僚と相談して、一部を肩代わりしてもらう」
……といった個別の対応によって事実上排除することも可能な場合があります。
② Combine(結合と分離)
結合の例としては、主には
「似たような作業を一気にまとめてやる」
「同種のスキルを要する業務を特定の担当者に集約する」
ようなことを発想します。また、
「毎日している記録や報告を週単位にする」
というように頻度を減らす代わりに集約して行う方法も考えられます。
……ただし、個人単位で行う場合には、単に頭の中で考えた「理論上の効率」が、実際にはあまり効果的でない場合も少なくありません。あとで述べますが、頭で考えると時間が短縮できる良い改善と思われたはずなのに、実行しようとした段階ではそのやり方は
「な~んか気分が乗らない」
「その通りやろうとすると、そのたびにじゃまが入る」
……というふうに感じることがあります。
現状を変更するにはどちらにしても試行錯誤が必要なことが多いですが、効率化を考える際には「自分の心理的負担の軽減」という視点も同時に持ち合わせないと実現性のある案になりません。
またそれとは別に、単純にパソコン内のデータの保管や分類のしかたといった具体的な方法論やツールの有効活用といった点もあるでしょう。
特にこれは、自分の業務を「Automatic」化しようとする際に重要なポイントでもあります。
③ Rearrange(組み換え)
前の「② Combine(結合と分離)」でも共通する点ですが、部署全体とか、全社的な業務改善、効率化を議論する時には基本的に
「同じ種類の業務を一人の担当者に集約する」
「同じ知識が必要な業務はまとめる」
という考え方をします。これは全体の効率を考えれば当然の発想ですが、個人レベルで考えるとそれが必ずしも自分自身の業務量を削減したり、時間を圧縮したりすることにつながるかどうかは場合によります。
実際のところは
「特定の人だけ業務量や負担が多くなってしまう」
「周囲に相談したり、協力を依頼することが難しくなる」
というように新たな問題が発生する原因になったりします。
また、もっと重要な点は
「それが担当者本人にとって有意義かどうか」
という観点で考えてみる必要があることです。
前に述べたように、あなた自身がその仕事をする理由や目的をどう認識しているかによって、その効率化があなたにとってどんな効果があるのか、まったく変わってきます。
あなたがもし特定の業務スキルの向上に集中したい場合、それはもちろんそれに関する業務を積極的に取っていったほうが良いことになります。
むしろそこは単なる効率を度外視して時間や労力をかけるべき部分と見做すこともできますよね?
しかし逆に言うと、同種の業務を集約すればするほど、あなたのスキルの幅自体は限定的になりますよね?
それをメリットと考えるか、それとも視野が限定され、他の面での機会を失っていると見るか……。
ですからそもそも何のためにどう効率化したいのかが先に明確になっているほうが有意義な改善につながりやすいでしょう。
④ Simplify(簡略化)
最期に簡略化、簡素化を考えます。これは私の感覚では基本的には自分にとって
「めんどくさい~」
と感じる部分を、面倒じゃなくするにはどうしたら良いか、という観点で具体的な手順などを見直せばおのずと発見できます。
むしろ注意する点として、個人的に業務効率を考え始める人は今まで述べたようなことをすっ飛ばしていきなり簡素化から始める場合が多いですよね?
もちろんそれもまったく無意味ではありませんが、それだけだと根本的な解決に至るのは難しく、大きな効果を得るには遠回りになる可能性も高いです。