お金持ちになる人の思考の特徴として、お金持ちになる人はとにかく頭に思い浮かんだことをそのままにしておかないで
「何らか形にしようとする」
という点が大きいと思います。つまり物事を
「具現化する力」
です。
これは金銭的なことや経済的なことに限らず、目標とか願望、あるは発想やアイディアといったある程度まとまったものでもそうですが、それよりももっと些細な、日常的な単なる思い付きのレベルでもおそらく同じ傾向を持っているはずです。
人はなかなか「考え」を具現化できない
むしろほとんどの人は、基本的に自分の内面にある意識、思考、発想、空想……といったものは、とりあえずは外部にある物質、現象、行動、結果……といったものとは関係ないものと当然のように区別しています。
たとえば、自分が心の中でどんなことを考えていようが何を思い描こうがそれはまったく自由で、それとは別に、自分が実際に日常生活をしたり、特定の行為や行動を「現実に」行うときにはそれなりのルールや行動様式があるので、それに従っていれば良いのだ……というような認識ですね。
つまり、ふつうは自分の内面世界は、外界から独立して自由であるというイメージを持っています。
……って、これは別に悪いというわけではなくて、むしろきわめて常識的な感覚です。
でも、いわゆるお金持ちになりやすい人、つまり
「お金持ち気質」
の人というのは、この点ではむしろちょっと「変」と言ってもいい特殊な傾向があるわけです。
強調した言い方をすれば、お金持ち気質の人は一方では
「目標達成のためには努力を惜しまない」
「自分の信念を曲げない」
「挫折や困難があってもあきらめない」
というイメージがありますよね?
でも、一方ではたとえば
「理想と現実の区別が付いてない人」
「子供じみた、分別のない人」
「自分の考えを押し通す、わがままな人」
といったある意味批判的な、軽蔑的な評価を受ける場合も珍しくないですよね?
このように、いわゆる成功者の像というのは一見相反する場合があります……しかし、よく考えるとこれらのイメージに共通して言えることは、いい悪いは別として、自分の内面で湧き起こった意図や思い付きなどをそのまま現実のものとして
「具現化する欲求」
がきわめて大きいということです。
言っておきますが、私は今別に「引き寄せの法則」が働くとか、潜在意識が宇宙を作っているといったことを言いたいのではありません。
「具現化したいという欲求」
は、ある意味では非常に本能的な、単純な欲求です。
あるいは小さな成功体験が蓄積されたのかもしれませんし、比較的そういうことが許される環境にいたのかもしれません。
いずれにしろ、成功しやすい人、お金持ちになりやすい人というのはそういう思考、行動が身に付いて強化されてきた結果として物事を具現化する意欲や能力が人一倍高くなっているということです。
具現化と具体化
経営者とか、経済的成功者は、しばしば遠回りな表現や、複雑な説明を嫌って
「もっと端的に話せ」
「具体的に言え」
といった言い方をします。
なので、仕事のコツや業務改善の方法論とかでも、よく
「物事を具体化すること」
が大切だと指摘されることが多いでしょう。
ちなみに、
「具体化」
とは「抽象化」の対義語なので、大まかなものをより細かいものに落とし込むというような意味ですね。
そして、この時の「落とし込む」というのはよく
「ブレイクダウン」
とも言われますが、もっと分かりやすく言えば
「実際にどうやるのか?」
ということをはっきり示すという意味です。
だから、具体化しろと言われたらふつうは、必要な各業務の詳細を考えたり、フェーズや期限を入れた工程表や実行計画を策定したり、担当者を割り振ったり……ということをします。
ところが、これに対して
「具現化」
とは、目標や理想など、つまり最初は実体がなく単に頭や心の中に描いているものを実際に実現することを指します。
具体化と具現化は似ていますがちょっとニュアンスが違う言葉です。
上の場合で言えば、たとえば
・必要な各業務の詳細を考えたり
・フェーズや期限を入れた工程表や実行計画を策定したり
・担当者を割り振ったり
することは、もちろん必要な「具体化」なのですが、そのことと、それを
「実際にやる」
こととは違います。さらに、そもそも一番重要なのは
・その各業務を遂行すること、ではなく
・期限通りに工程や計画を進めること、でもなく
・担当者を適切に割り振って、恙なく協力的に仕事を進めること、でもありません。
一番重要なのは、どう具体化しようと、結果として初めに想定した「考え」そのものが
「現実に起こること」
でしょう。
あえてはっきり区別するならこの「現実に起こること」というのが
「具現化」
ということです。
その過程で行われた「具体化」は、具現化するための一つの手法としては非常に有益でオーソドックスな手法ではあるのですが……乱暴な言い方をすれば、結局のところ
「どのように具体化しようと、具現化すればいい」
わけで、逆に具現化しなければいくら具体的な考えも計画もほとんど意味のない無用の長物になってしまうわけです。
原初的な「具現化するクセ」
つまり、あえて単純に言えば、上のような一般的な「具体化」の手続きを踏まなくても何かを具現化することはできます。
たとえば、小さな子供が積木でお城を作っています。
砂浜で、砂でトンネルや道路を作っています。
……これはすでに具現化です。
このように、単なる思い付きと、後は周りに積み木や砂浜があって、そして思いのままに手を動かせばそれは「具現化」されます。
別に物事を具体化して考えなくても……です。
お金持ちになる人が持っている性質というのは、むしろこっちの性質のことです。
「抽象的なことを緻密に具体化するテクニック」
ではありません。
その意味では具体化というのはいわば後付けのテクニックであって、お金持ちになる「考え方」としてより決定的なのはむしろ
「イメージしたものを、とにかく具現化しようとするモチベーション」
です。
欲求なのです。
「具現化」は能力というより性質
考えたことや思い付いたことを単に「思い付き」や「考え」というだけで留めずに、何かしら現実に反映させようとする……というのは、ある意味では一種の「性質」というか「クセ」とも言えます。
一般には、「能力」という言い方をすると、努力して身に付けたような、ちゃんと計測できる基準を持ったレベルみたいなものをイメージしてしまいますけど、これはでも、どちらかというとタイプというか、性向、性格といってもいいかもしれません。あるいは、モチベーションが高いというか、その意欲がもともと強い傾向があるわけです。
……と言っても、これは別に、おそらく努力などによって後天的に習得することが難しい種類のものでもありません。もともとだれでも最初は持っていたであろう自然な欲求にすぎません。
これはもともとは単に「なんでも形として表すことにこだわる考え方のクセ」なんですよ。
つまり、お金持ちになりやすいのは
「形にしないと気が済まない性格の人」
「なんでも一定の形にしようとするタイプの人」
で、それは本来だれでも持っていた欲求だったのですが、多くの人はそれを強化できずに忘れてしまいがち、というだけのことなのかもしれません。
「成績や能力は関係ない」と言われる理由
しばしば、経済的成功に学歴や成績、または頭の良さとか能力といったものはほとんど関連性がない、と言われます。一見かなり関係ありそうですが、でも追跡調査や統計データといったものから実際の結果を見ると関連性がないのだ……ということのようです。
その検証結果のようなものを直接見る機会なんてありませんので実際のところどういう基準でそう言えるのかという根拠ははっきり分かりませんが。
ただ、やはり一つ考えられるとすれば、現実の問題はその、頭の中で考えた内容、思考によって処理した内容をどうやって実際の現象として外界に反映させるかということなんですよね?
……だから、どちらかというと、思考の内容を外界に反映させる力、いわば「具現化力」のほうが結局は何事にせよ大きな問題です。
たとえば学校の成績や、単なるテストのようなもので測れる意味での「思考力」や「発想力」というものは、これと比べるとやはり自己実現とか経済的成功の決定的な要素ではない、という言い方は妥当ということになります。
でも、仮に自分の内面で思考したり発想、創造したりする力と、それを現実の何かしらの形として外に出して表す力とが、同時に両方必要だと考えると、イメージとしては
「思考力×具現化力」
っていう感じになるように思うかもしれません。つまり、両方鍛えれば相乗効果がある、というように思えるかもしれません。
ですが……実はそれもたぶん違っていて、むしろ「具現化力」というのは物事を具現化する際の
「ボトルネック」
になっているので、仮にすごく高い思考力や、発想力を持っていたとしても、それを具現化する力が少なければそれは水道の蛇口のようにその思考や発想を自分の内面に留めたままにしてしまうことになります。
行動力、実行力を高める根本
ちなみに、ここで言っている「具現化する力」というのは、一般に重要だと言われる
「行動力」
「実行力」
「実現力」
「達成力」
「突破力」
といったものの主要な基礎部分であるとも言えます。
そして、それらにはもちろん、実際に考えたことを現実に反映するための知識や経験値とともに、物事を実際に進めていく力量や、周囲の人々を巻き込んだり協力したりする力、当然マーケティング力とかマネジメント力みたいな実行ベースでのテクニックやノウハウも含まれてくることになります。
実際に対処しなければならない事柄はいつも
「積木でお城を作る」
程度の難易度であるとは限りませんから。
ですから、抽象的な知識や発想を「具体化」するというテクニック……そういった思考法や実務上のノウハウも当然生きてくることになります。
それはなります。なりますが……。
でも、そもそも
「頭で考えたことを外界に形として表そうとする意欲」
はエンジン自体のスペックみたいなものですから、お金持ちになりたいなら真っ先にこれを高めないとどうにもならないところがあります。