就職したばかりの
「一年生社員」
の方の多くは、まずは目の前にある仕事内容と、社内ルールや暗黙の人間関係を体感し理解するだけで精いっぱいだと思います。
もちろん、あなたが就職した会社の体制とか環境……要するに個別の状況によりますけど。
何となく少し慣れてきましたか?
新入社員、特に新卒で正規入社された正社員の方なら、今の時期になると一応は
「自分がやるべき仕事の内容」
「会社内で望まれる立ち居振る舞い」
といった目の前のことくらいは見えてくるようになりますよね。
……また
「とりあえずの仕事はしているけど、成長している気がしない」
「同期の中で遅れを取りたくない」
とか
「自分、ずっとこのままでいいのかな」
「先々のために、もっと何かできることはないだろうか?」
とか……自分自身の立ち位置や、少し将来的な視野などを持つ余裕も生まれているでしょう。
自己啓発を始めるタイミング?
もしかすると……中には早くもビジネス書や自己啓発本を読み耽っている意識高い系の人もいるかもしれませんね。
ただし……他でも言ってるかもしれませんが、多くの人がイメージするような典型的な
「自己啓発」
というのは、まだ仕事の内容自体を完全につかみ切れていないような新人さんにとっては実は
「両刃の剣」
となる事例も決して少なくはありません。
なぜなら、たいてい本などから吸収できる知識は一般化、抽象化されているのに対して、
「入社一年目の新人さん」
に実際に現場的に求められることは、どちらかというと
「目の前の具体的な作業、行動」
である場合が多いからです。
当たり前すぎて逆に意外かもしれませんけど……新人さんにとっては
「目の前の作業をこなすこと、都度の指示に従って動くこと」
こちらのほうが第一義で、当然こちらに比重を置いたほうがいいです。
要するに、実際には仕事というのは最初からあんまりにも
「理屈から入りすぎる」
とむしろマイナス面が出やすくなるのです。
私が推奨している「転換キーワード」法
かと言ってです……。
ただ単にその日その日、言われた作業だけを忠実にこなしている「だけ」の場合も、それはそれで問題なわけです。
「目の前の仕事に没頭しすぎたり、それだけで満足しているというのもいけないが、勉強や自己啓発的な方面に比重を置きすぎてもいけない」
という、つまり塩梅というか頃合いというか……大きく伸びるには一種のバランス感覚が必要なのですが、悲しいかな、こういうのは、それこそある程度キャリアを積んでみないとふつうは体感できないのです。
だから新人さんほど陥りやすい「罠」と言えるかもしれません。
それでですね……以前から新入社員さん向けのアドバイスとして私が用いていた、ごく簡単な自己啓発法を紹介してみようと思います。
……というか、自己啓発というほどでもないんですけど、自分で言うのもなんですが、ちょっと変な方法と思うかもしれません。
それは、あえて名付けるなら
「転換キーワード」法
です。
どうやるかというと、単純に言うと、後に挙げるいくつかの言葉を覚えておくだけです。
以降各記事で一応の説明も加えますけど……基本的には単にそれだけを覚えておくだけでもかなり効果はあると思います。
また、それぞれの概念や解釈自体、自分が仕事に慣れ、経験が増し、レベルが上がっていくに従って変化していきますから、最初は意味とかあんまり細かくこだわる必要も実はないのです。
それより、もしよかったらあなたが実際に仕事する中で
「あ、この状況はこの言葉に当てはまるんじゃないか?」
と感じたときに思い出して、できれば唱えてみてください。
つまり、言葉上の意味とか解釈とかを実際にやっている仕事と分離して考えるんじゃなくて
「仕事の範囲で日々起こった事例に直接結びつけていく」
ということをします。
すると不思議なことに(……って本当は別に不思議でもなんでもないですけど)あなたがどんな仕事をしていようと、どんな職場環境に置かれようとも、あなたの力は
「これらを知らないで、日々の目の前のことだけを見てやみくもに努力している人より」
急速にアップすると思います。
転換キーワード
さて、ここで挙げるのは
「入社一年目」
くらいの新人さんを想定した転換キーワードです。
1 目標より「決断」
2 MUSTより「WILL」
3 観客より「プレイヤー」
4 時間より「価値」
5 意気込みより「行動」
6 悩むより「教わる」
7 記憶より「記録」
8 経験より「発見」
9 楽より「任」
10 効率より「効果」
11 部分より「全体」
12 言葉より「意図」
13 集めるより「選ぶ」
14 評論より「働きかけ」
15 維持より「挑戦」
16 蓄積より「体系化」
17 完全より「更新」
18 担当者より「代表者」
……こんな感じです。
言葉としては何となく当たり前に見えるかもしれません。
それに、もちろんもっと他にもいろいろ思い付くかもしれませんし、自分なりにもっとしっくりくる表現を思いつく場合もあるかもしれません。
でも、できれば、今はあまり深く考えずにいったん……お経みたいな感じでこのまま頭に入れてください。
むしろそれ以上先回りしていろいろ頭で考えようとしないでください。
私が今まで見た中では、結局そのほうがうまくいくんで。
この言葉自体について頭の中でいろいろ考えるんじゃなくて、日々自分が仕事をする中で、どれかに当てはまる場面、事例を発見することを意識してください。
就職して間もない頃であれば、おそらくこの方法は最も時間を食わなくて、かつ有効な「自己啓発」法になります……と私は経験上そう思ってます。
通常の「自己啓発」の弱点
この方法は、先を見すぎて理論や観念だけに走ってしまって、目の前のことにしっかり取り組めない
「自称意識高い勉強家」
の人と比較しても、おそらく周囲の評価は高くなり、自己の成長もより早くなるはずです。
なぜかというと、ビジネススキルとか自己啓発的な知識というのは、実際のところ何が難しいかと言って
「言葉として理解したこと」
と
「日々の仕事の中で実際に起こっていること」
とが、あなた自身の中でうまく結びついて働くというのが非常に難しいからです。
それで、しばしば
「口ばかり達者で使い物にならん」
「お前はいったい何を勉強してきたんだ」
と批判されたり
「半人前のクセに理屈ばかり言うな」
「いいから黙って言われたとおりにしろ」
……と、否定されたりすることになるわけです。
いいですか?
あくまで平均的な場合ですけど、ごく一般に考えて、少なくとも
「すでに3~5年目以上のキャリアがある社員さん」
だったら、本格的な自己啓発に取り組めば有効に働く可能性も高いです。
それは、すでに自分の仕事の中身自体について意識する必要性が少なくなっていること、また、そのボリューム感やペース配分などが分かっているから
「自己啓発に力を割く余力」
を自力でコントロールして生み出せるからです。
また、ある程度、自分がやっている仕事の本質や全体像が経験によって体感的に把握できているので、たとえば自己啓発本とかの
「言葉や文字情報」
を、すぐに自分の実際の活動内容に当てはめ、自然に結び付けて考える素地ができているからです。
……つまり、そういう状態にとっての勉強とか自己啓発というのは、実質的には
「すでに知っていることをあらためて言語化する」
という作業に過ぎないのです。
そのようにして、いったん経験や体感を
「言葉や概念と結び付ける」
ことを学ぶわけです。
その経験的な学習が下地となって初めて、今度は言語的な情報を実際の行為に当てはめて活かすという流れにも対応できるようになります。
こういうプロセスを経て、やっと「生きた知識」を得られるようになっていくわけです。ふつうは。
……もともと資質的に、ある意味自然にそういうことが得意な人というのもたまにいるのですが、ほとんどの人はまず
「観念と行動が乖離します」
この乖離に気が付かない限り、単なる知識や情報は、あなたの仕事に直接生かすことがなかなか難しいのですが……経験が浅いがゆえに、多くの新人さんはこのことに気が付くにも相当の時間を要してしまいます。
……実はこれは若い人の指導やアドバイスをする時にいつも「壁」になります。
現場では多くの場合
「やる気がない」
「向いてない」
「頭が悪い」
……などと言って済まされてしまいがちなのですが、指導する側の立場からすると、ここをどうやって越えるかという点こそ最も意識すべきところと言えます。
そこを乗り越える方法として、推奨するのが「転換キーワード法」なのです。