一般に、多くの人は交友関係が幅広く多いほうが社会的成功を収めやすいと思っています。
必要な助力を得られる可能性が広がるし、知識や情報も増え、幸福感や生活の張りみたいなものにもつながるし、モチベーションも維持しやすいと考えるでしょう。
また、イメージとして社交的で人付き合いに関してポジティブなタイプの人のほうが、そもそも成功しやすい資質を持っているという見方もありますよね?
しかし、実は必ずしもそのように言い切れない面もあります。
この記事ではあえて逆説的なことを書きたいと思います……特に、現在のようにそもそも時代状況が大きく変わってくると、今までの常識が必ずしも当てはまらない場合が少なからず発生しているように見えるのです。
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交友関係が成功の決定的要因だった時代
おそらく、20世紀中盤までくらいの時代状況を考えると、社会的に成功するかどうかは
「いかに重要人物とのコネクションを持つか」
「どんな人的グループに属することができるか」
といった条件がかなり決定的だったものと想像できます。
そもそも家柄とか、学歴や学閥の問題は典型的ですね。
あるいは海外では制度的に、または実質的に
「階級社会」
と言われるような国や地域もありますよね?
……もちろんこれは今時点でも完全になくなったわけではありませんが、一昔前までと比較すると重要度はぜんぜん違うでしょう。
このような社会的制約が徐々に薄れてきた……とも言えますし、現代はそれ以外にも社会的成功に至る道が多様化した、という言い方もできるでしょう。
いわゆる「人付き合い」のマイナス面
あらためて考えてみると、今現在は少なくとも
「付き合う人の数は多いほうがいい」
「友達がたくさんいたほうがいい」
「顔が広いほうがいい」
……とかんたんには言えない場合も多くなっているような気もします。
もちろん有利な場面もあるでしょうけれども、少なくとももはやそれは社会的成功の決定的条件だとも言えなくなっている気がします。
では、交友関係が成功にとってマイナスに働く面がないかとあえて想像してみると……次のようなデメリットが思い浮かびます。
① 交友に時間が割かれる
新しい交友関係を増やそうと努力することや、幅広い人脈や交友関係を維持しようと考えるなら、当然その分だけ人付き合いに時間が割かれます。
現代人はすでに昔と比べ物にならないくらいに忙しい毎日を送っています。
だれに聞いても
「時間がない」
「時間がない」
と言うのですから。
さらには、当然社会的に成功するにはビジネスや仕事そのものに多くの時間を費やす必要があります。
昔と違って今は知識集約型の仕事も多いのですが……そのためには専門知識その他を勉強し、習得する時間も多大にかかります。
あなた自身が何で成功に至ろうと考えているかにもよりますが……成功の手が届くまでの各段階で
「人付き合い」
よりも優先的に時間を割くべき事柄というのが発生します。
② 人間関係の相対的な優先度が上がる
時間の問題だけでなく、いわばメンタル的に
「人間関係」
に対する意識の上での優先度が高くなります。
人との約束事や、だれかに依頼された仕事や手伝いのほうを優先しなければならない場面が多く発生します。
もちろん、逆に他人に頼れる部分も増える可能性はありますが……この辺はうまくやらなければ一方的に頼まれごとばかり増えてしまうこともあります。
……となると、たくさんの相手と友好的な関係を構築し、維持しながらも、それらの人たちに振り回されないように、また
「結果的に自分が損をしないように」
上手にふるまう必要もあります。
ある意味、対人関係能力により磨きをかけないといけないわけですが……そのように考えている時点で、成功することよりも先に、交友関係上の諸問題をより効果的に、効率的に扱うためのスキルを磨くことに意識が向いています。つまりあなたの
「人間関係」
に関する問題への興味や関心はより高くなっていることになるでしょう?
③ すでに存在する人間関係に束縛されやすくなる
どうしても既存の関係者の意向に逆らって、自分本位に独断で何かを選択、判断することに抵抗が生まれます。
何事もみんなの意見を反映して、みんなに配慮して……と考えるならば、常に今までと違うこと、新しいことを行うためにより負荷がかかります。
仮にですが……そのような関係者がそもそもあなたの周囲に存在しないならば、考える必要のない問題についていちいち考慮しなければなりません。
あるいは、そんなことは考慮しないぞ、純粋に自分の心に従うぞ……と自分に言い聞かせるなら、その分の精神的負荷に耐えなければならないのです。
④ マインドに潜在的な影響を受ける
意識せずとも、人間は自分が付き合っている周囲の他人から影響を受け続けています。
類は友を呼び、朱に交われば赤くなり、結局あなたはどうしたって、周囲5人の平均をとった人物になるのです。
……ある意味確率の問題ですが、単純に言って交友関係がごく幅広い人というのは、要するにより多くの
「成功しない人」
「成功に縁のない人」
と接触していることになります。
……なぜって、もちろん世の中は
「成功しない人」
「成功に縁のない人」
のほうが圧倒的に多数派なのですから。
人付き合いを避けることのマイナス面
……などと書いてきましたが、もちろん上の話はかなり極端に一面的にデメリットだけを論ったもので、普通に考えれば言うまでもなく
「人付き合いをあえて避けること」
のデメリットだって少なくありません。
「成功のチャンス(機会)を逃がす」
「得られる情報が限られる」
「自分でも気づかないうちにパフォーマンスが下がる」
「決定的協力者に出会う確率が下がる」
他にもいろいろ言えると思います……が、こちらはわざわざ挙げるまでもないですよね。
いずれにしろ、ここまでくると、おそらくほとんどの人は同じ結論に達する可能性が高いと思うのですが……。
結論:付き合う相手を選ぶ
……と、まあこう考える人が多いと思います。
私が思うには、まず人間関係一般に関する固定観念を捨てましょう。
そして、明確な基準をもって付き合う相手を自分の意思で選ぶこと。
だれに対しても分け隔てなく接するのが「理想」だとか「人間のあるべき姿」だとか考える必要はもはやありません。
ただし間違えないでくださいね。
私は、自分にとって大切な人だけを大事にして、それ以外の人なんかどうなってもいいから放っておけ、無関係な人はぞんざいに扱っても構わない……とか言いたいのではありませんよ?
そうではなくて、自分にとっての
「特定個人」
に対する考え方や接し方と、その他の一般的な
「一般他者」
とを明確に分けた上で、そもそも人間関係、交友関係に対する考え方や接し方をまったく別のものと考えてみることをおすすめしたいのです。
ここで言っている
「特定個人」
とは、要するに自分にとって大切な相手、 自分が主体的に交友しようとしている相手のことを指します。
個別にはいろいろな関係が考えられますが、それらの人はあなたにとって重要な人々であり、それ以外の一般他者とはまったく別の基準、価値観をもって接するということです。
ごくかんたんな例を言うと、たとえば
「特定個人に対しては常に素直な自分の本音を伝えていく」
けれども
「それ以外の一般の他者に対しては、相手を優先して配慮や思いやりをもって当たる」
……というように区別して考えるのです。
別に今この対応がふさわしいとかではなくてこれは単なる例ですが、とにかくこのように基本的なスタンスを分けて考えておくという意味です。
このように考えることは、私は別に差別でも矛盾でもないと考えています。
……繰り返しますが、重要でない人物に対してはあえて悪い対応をしろといいうのではないです。
全部を単に「人間関係」として一緒くたに考えるのではなくて、別物と考えるということです。
変な理想論や倫理意識や罪悪感を捨てる必要があります。
観察して見れば分かりますが……成功している人はみな実際のところそのようにしているように見えます。
もっと言えば……それ以外のほとんどすべての人々も、意識としてどう思っているかは別として現実には相手によって態度や接し方を変えているほうがふつうではないでしょうか?
ただ、ふつう一般的には多くの人は、その区別を自分で意識して、ではなくて
「環境や状況に依存して無意識に」
行っているだけです。
人間関係を主体的に選択する
むしろ、そもそも人間関係、交友関係というのは
「主体的選択による部分」
と、望むと望まざるとにかかわらず
「環境依存的な部分」
とが両方あるのですから、両者はまったく違った前提に立って考えるのが自然であり、それは悪いことでもなければ、矛盾しているのでもダブルスタンダードでもないということです。
最初の問いに戻ると、この意味で私は
「交友関係をむやみに広げることは成功に寄与しない」
と考えています。
それよりも、
「自分にとっての特定個人を増やしていく」
ことを意識することが成功にとってより重要だと思うのです。