子供にお金の教育を早くしなければ……と考える親御さんが増えています。
お金の教育とは本来
「正しい金銭感覚」
「お金に関する正しい知識」
を身に付けさせることを指しますが、実際に何をどのように子供さんに教えるのかとなると迷うことも少なくありません。

お金についての教育の必要性については私も賛同します。
一昔前までは、
「お金の話に子供が首を突っ込むのは良くない」
「子供がお金のことなんか気にするもんじゃない」
といった価値観が日本では主流だったと思います。私自身が子供の頃を振り返ってみても確かにそうだったと感じます。
しかし、特に今現在の社会状況や現代の子供さんが置かれている環境を前提にすると、やはりある程度の
「マネーリテラシー」
が相当低年齢のうちから必要になってきているということは否定できないでしょう。
お金の価値観は「小学生」くらいで決まってしまう
実際のところ、家庭環境の変化などの要因から、現実に自分で買い物をする必要があったりするため「お金を使い始める」年齢は以前よりも低下しているでしょう。
学校帰りに自分でコンビニで夕食を買って食べる小学生とか……今では当然にあり得る状況ですね。
また、ネットやスマートフォンを使い始めると通信費を気にしたり、それらを通じてゲームや音楽などを自分で買ったりするというような場面もあります。
どういう形であれ、おそらく今の子供たちは小学生くらいから、遅くとも中学入学くらいの段階で早々に「お金」というものを現実的に見なければならない環境にさらされることになります。
しかし、実は子供にお金の教育を急ぐ必要性というのは、子供が実際にお金を使う場面があるから……というような現実の都合による理由だけではありません。
むしろ問題は、多くの子供たちはその年齢になるころまでにはすでに一定の
「お金についての根本的な価値観」
を身に付けてしまう可能性があるということです。
それは結局、その後の人生の中での、その子供さんの「お金との関わりかた」の前提を決定してしまうという意味です。
そのことのほうがより大きな問題なのです。
お金の何を教育すればいいのか?
そこで親御さんとしては当然、早い段階から意識的に
「お金の教育」
を始める必要があると考えるわけですが……。
すると親御さんからしても
「マネーリテラシー」
「お金の知識」
というのが現実的にどんなことを指すのか?
いったい何を教えたら良いのか?
……というのはなかなか難しい問題であることに気が付くわけです。
ある意味当然ですよね?
多くの親御さんたちが、自分自身「お金の教育」なんて受けてないわけですから。
一般的な「お金教育」の姿
想像するに、小さなお子さんがいるご家庭でしばしば行われている「お金の教育」って、こんな感じです。
まず
「はじめてのお使い」
という人気テレビ番組がありますが、あれのようにお子さんが一人で買い物ができるように練習させようとすることです。
これは、正直言ってまったく何も「お金の教育」にはなっていません。
なぜなら冒頭書いたように、お金の教育とは
「正しい金銭感覚」
「お金に関する正しい知識」
を身に付けさせることだからです。
単に自分でお買い物ができるとか、そういうことが必要なわけではないのです。
そこで、今度は子供さんに
「いいか、お金というのは……」
というふうに、お金の意味や本質みたいなことを話して聞かせようとするでしょう。
ところが、この時に教える内容や表現がズレているとまったく逆効果になる危険性さえありますから、慎重になるべきです。
たとえば典型的なのは
「お父さんがお仕事頑張っているから家族が生活できるんだよ」
とか。これは私自身も子供の頃よく言われました。
……確かにこれは父親に対する畏敬の念(?)を抱かせるためには有効かもしれませんが。
しかし、あくまでマネーリテラシー教育という観点からする限り、その意味するところは
「お金は仕事で苦労しなければ手に入らないもの」
と言っているに等しいです。
あるいは、世の中の、たとえば自宅の部屋の中にあるものはすべて、もともとお金で買ったもので、お金がないと何も買えないんだよ、とか。これは、
「お金は必要を満たす唯一の手段」
という観念を植付けることになります。
……これらの観念をお子さんに教えることが「お金の教育」になっているかどうかははなはだ疑問ですよね?
いや……確かにある意味での「教育」にはなっているかもしれませんが……その教育はお子さんにとっては逆効果かもしれないということです。
誤ったお金教育は「負の連鎖」を生む
たとえば、単にむやみに「お金は大切なもの」という観念ばかりを強調するような教育は往々にして不必要にお金を崇拝するような価値観や、お金に対して無用な怖れを抱かせる原因になり得ます。
かと言って、逆に
「お金は人生の本質じゃない」
「お金なんて重要じゃない」
「お金よりもっと大切なものがあるんだ」
という説明も(これも私自身子供の頃しばしば聞きましたが……)往々にして誤解を招きます。
実際、多くの自己啓発、成功法則の説明では、多くの人がお金に対する「メンタルブロック」を持ってしまう理由は、周囲の大人などからそのような価値観を伝えられ、受け継いでいるからだと解釈しています。
この意味で言うと明らかにまったく逆効果です。
この種のいわゆる「教育」というのは、結局は親自身が持っているお金に関する価値観を子供にそのまま伝えているだけです。ですから、有効性のある教育をするには親自身がすでに一定のマネーリテラシーを獲得していることが前提になります。
あるいは、こういう言い方もできるでしょう。
親自身が、自分はすでに「お金」の面では成功している、という状況にある場合、その観念をそのまま子供に教えれば、有益な教育になる可能性が高く……。
逆に親のほうが、実は自分自身が「お金」に関して失敗していると感じている場合、または現状の家計の状況などが満足できるものではないと考えている場合……その親が持っているお金に関する観念や、価値観などを子供に「教育」したら、必然的に子供もそれに近い状況に陥る可能性が高いですよね?
「お金に恵まれている人がお金のことを教育すれば、その子は将来お金に恵まれる」
「お金に困っている人がお金のことを教えれば、教わったほうも将来お金に困ることになる」
……これはある意味当然の、かなり蓋然性の高い理屈です。

ですから、お金の教育の必要性は疑う余地がないとしても、その内容や方法論はごく慎重に考えるべきです。
お金に関して何を教育すべきなのか……という問題については、お金の専門家や、教育関係者などからすでに多くの情報が提供されています。
それらの意見を参考にするのも良いでしょう(ただし、その中には私個人的には疑問を感じる内容のものもあります)。
しかし、いずれにしろ、お子さんに「お金教育」をする時に先に一番大切なのは、それを教える親御さん自身が、お金というものについてどのような価値観を持っているかを振り返り、再確認することではないでしょうか?
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私が子供に教えたいこと
その上で、私自身が自分の子供に「お金教育」をするとしたら、いったい何を教えたいだろう……とあらためて考えてみたところ、私の場合は次の点が思い浮かびました。
「お金」に関して我が子にあえて話すとすれば、私なら以下の点のみです。
① 「お金」というのは「貨幣」のことではないということ
あなたが「お金」と呼んでいるものの実質は、今あなたの目の前にある紙幣や硬貨ではない、ということを理解させたいと思います。紙幣や硬貨は「お金」を形として表すための道具、記号にすぎず、実態は別のところにあるのだということです。
ただし、
「じゃあその実態って何なんだ?」
と、もし子供が尋ねても、私自身はそれにすぐ明快な答えを与えようとはしないでしょう。それは子供自身が時間をかけて体得すべきものだから。それに、その中身についてよく考えたり、自分なりのお金に対する感覚や哲学を確立するためには、おそらくもう少し年齢を重ねる必要があります。
子供の間は、とりあえず「貨幣はお金の実体ではない」という問題意識というか、一種のなぞなぞのように思ってくれれば十分かな、と思います。
② お金は無限にあるということ
次に、これだけは絶対に最初に伝えたいことですが……貨幣という意味ではなく、意味としての「お金」というものは(……もし現在あなた自身の手元には限られたお金しかなかった場合でも、それと無関係に)
「その総量は実質的に無限である」
ということです。
世界中にお金、あるいはお金を生み出すもの(潜在的価値)は無限に存在しており、将来にわたってさらに無限に発生し続けるものです。
ですから、別に人間同士で奪い合う必要もなければ、今他人が持っているお金を羨んだりする意味も必要もまったくないという実感を子供に知ってほしいと私は感じます。
他人のを取らなくても、自分で見つけてくればいい……と言いたいわけです。
③ お金を増やす手段について
もうひとつ、最後に「お金を増やす」という意識と、その手段についてです。
私は別に株式投資のシュミレーションを学校教育に取り入れるといった方針に賛成ではありません(むしろ反対です)が、とにかくそれに限らず、お金を増やす方法というのはきわめて幅広く考えられるのであって、たとえばどこかで雇われて働き、給与をもらうという行為ももちろん有力な、自分のお金を増やす方法のひとつには違いないですが、それはあくまで多くのやり方の中の典型的なひとつにすぎないということです。
④ 余計なことはなるべく言わない
私が子供に伝えたいことは以上です。
そして、それ以上の具体的な「お金の使い方」「お金に関する価値観」などの知識を過剰に与えることを、私なら避けるだろうと思います。
たとえばレジでの買い物のしかたとか、貯金の必要性、あるいは労働の美徳とか、働いてお金を稼ぐことの大変さや素晴らしさ……これらは、別にだれが教えなくても子供はいずれ当然にそれを身に付けることになるでしょう。
むしろ、たいてい余計な概念や価値観などを付け加えれば付け加えるほど逆効果になるように感じるからです。