マジシャンは、オーディエンスを騙すのが仕事です。

観客は、騙されることを半ば期待している。でも、その種(トリック)も知りたい。

種明かしだけを期待しているしかめっ面の客がいる……気取った、スノッブな、すべてをお見通しであるような表情と風貌を持つ、人に好かれそうもない「紳士」です。


それでも、マジシャンは観客のために「手品」をする。

彼の技巧のすべてを駆使し、最高のパフォーマンスを目指して、舞台に立っている。

紳士が叫んだ。

「その手品は見たことがある!」
「私には通用しない!」

……マジシャンは一瞬苦々しい表情を浮かべたかにも見えたが、それは一瞬のことだったので、ほとんどの観客はそれに気が付かなかった。

それよりも……オーディエンスは一斉に、その紳士を見た。

非難と嘲笑の笑みを浮かべながら。

……マジシャンは、何事もなかったかのように手品を続けた

すでに、紳士によって暴露されたそのトリックを、しかし見事な技巧を駆使して、そのままやってのけた。

観客は、まるでその場に彼の紳士がいなかったかのように、マジシャンに向かって精いっぱいの拍手喝さいを送った。

紳士はひとり呟いた。

「そんなものでは、私は驚かない。それでは、私を騙すことはできない」

と。


「成功に縁遠い人間は、そこに隠された『種』を探そうとする」

しかし、成功者は

「人がそれに騙される構造を楽しむ」

のです。