「ミッドライフ・クライシス(中年の危機)」とは、中年期に特有の原因からくるうつ病や依存症、あるいは離婚や自殺といった社会問題をも含めた心理的な危機を示唆する言葉です。
もちろん症状としての、たとえばうつ病にしろ依存症にしろ、他の問題もそうですが、これは別に世代を問わず、時代を問わず常に大きな問題ですよね?
ただ、昨今取り立てて「中年の」危機と特定した形でミッドライフクライシスという話題が多く取り上げられるということは……何か中年期に特有の理由があると推測されます。
最新の記事
- 「それは在る」を読んで思ったこと
- 「思考停止という病」を読んだときに思ったこと
- 「超雑談力」を読んだとき思ったこと
- 「苫米地英人の金持ち脳」を読んだとき思ったこと
- 「リフレクション-内省の技術」 を読んだとき思ったこと
- 『理想の人生をつくる習慣化大全』を読んで思ったこと
中高年に特有の危機的現象
中年というと、ざっくり言ってアラフォー世代くらいですよね?
しかし、日本だと平均寿命が伸びて高齢化しているのもあって、ミッドライフクライシス(中年の危機)とは言っても、だいたい定年するくらいまでの範囲を含んで議論されるようです。
で、この世代に特有の変化ということは、つまり青年期からの推移に伴った変化という意味になります。
「身体的危機」
まず若い頃のように体力的に無理がきかなくなるということが挙げられます。単純に身体能力や運動能力は落ちるし、以前のようなスタミナもなくなってきます。
同時に、生活習慣病とか更年期障害といった、若い時にはまったく意識していなかったような問題が身近になってきます。
もちろん性的機能や性に対する認識の変化も大きいですよね?
「家族関係の危機」
家庭がある場合には一番大きいのはやはり、子供がだんだん大きくなって親の手を離れてゆくことでしょうね。
特に女性の場合には役割の喪失感や、いつの間にかできている夫との距離感やコミュニケーションの齟齬などが強く意識されて情緒不安定や躁鬱的な症状に悩まされることもあるようです。
それと、自分の親との死別を経験する時期でもありますし、介護や同居といった問題が他人事ではなくなってきます。
家族構成や関わりかたの変化とともに、自分の老いとか、たとえば自分がもっと歳を取ったときの不安なども今までより深刻に考え始める時期でしょう。
「職場での危機」
中年期と言えばふつうは仕事上はまだまだ現役世代で、人によっては責任が重くなったり、最も多忙な時期かもしれません。
しかし、同時に自分自身のキャリアの先が見えてくる時期でもありますよね。
また、新たな製品や技術革新によって、過去の経験が次第に通用しなくなってくる感覚があります。せっかく苦労して身に付けたスキルやキャリアなのに……。
部下や後輩などに劣等感を抱いたり、価値観のギャップに苛まれたりすることもあり、今までの仕事のやり方や考え方を見つめ直さざるを得ない時期になります。
中年期は心理的、精神的な折り返し地点
上記のような外的要因は、結局は自分の内面の問題に直接的に刺激を与えます。
単純に精神的ストレスになるだけではなく、いずれも自分の過去の価値観や慣れ親しんだ方法論について疑問や不安を生じるきっかけになります。
また、そのような個別の問題とは異なるレベルで、人生を俯瞰した場合、おそらくこの時期は、いわゆる
「まだ半分以上ある」
という認識から
「あと半分しかない」
という認識への変化を強いられる時期に当たります。
人生の折り返し地点です。
個別の問題についてもさまざまな不安や葛藤が起こりますが、それだけではなく、自分自身のアイデンティティや、自分に人生全体としての意味や価値などについて目を向ける機会が増えます。
これは自分の意識のかなり深い部分に影響を与えるでしょう。場合によってはそれは深刻な心理的危機を引き起こす危険性があるものなのです。
燃え尽き症候群、空の巣症候群に対処する
【燃え尽き症候群】
今まで仕事などに打ち込んできた人が、慢性的なストレスなどによりやる気を失い、深刻な無気力、無関心などに陥ること。社会生活に支障をきたす場合もある。【空の巣症候群】
ひな鳥が旅立って巣が空になるように、子供が成長、自立して手を離れることによって親が孤独感や喪失感から情緒不安定や抑うつ的な症状を起こすこと。
これらは中年期に起こり得る症状の典型的な例ですが、原因として共通しているのは
「目的や役割の喪失感」
です。
会社のため、家族のため、子供のため……など、自分に与えられていた役割を果たすことに没頭していた人にとって、中年期を迎えてその目的が消失してしまうということは想像以上に大きな心理的、精神的影響を与えるでしょう。
ということは、言葉で言うほどかんたんなことではないとは思いますが、頭で考えればやはり
「何らか次の目標なり、役割なりを見つけること」
が最も有効な解決策ということになります。
となると、そうです……このタイミングこそ、まさに「啓発」が必要なタイミングだということですよね。
人生をフェーズの推移として見た場合、ごくふつうの場合であれば中年期には、たとえば
「自分は本来もうこのフェーズにいるべきなのに、まだそこまで進めていなかった」
と感じるならば、それを満たすには何をしたらよいかというふうに考えてそれに集中的に取り組む必要があります。
あるいは、
「ああ、自分はもうそろそろ次のフェーズに進むべきタイミングなんだな」
と感じたとすればそのために必要な情報を探したり、すでにそのフェーズに進んでいると思われる人の話を聞いたりするのが有効だと気が付いたりします。
このようにすることは、それこそ本来の意味での自己啓発と表現してもよいでしょう。
ミッドライフクライシスを迎える時期というのは、ある面で言えばまさに自己啓発するのに適した時期とも言えるのです。
本来の自己啓発を目指す
一方で、ミッドライフクライシスに当たる時期は心理的に不安定になっている場合があり、さまざまなストレス要因や大きな問題を抱えていることも事実です。
それこそ、
「夫がおかしなセミナーにはまり出した」
とか、
「妻が最近わけの分からない集会に熱心に通い始めた」
といったようなことが発生するタイミングでもあるでしょう。
特に中年期に限ったことではないにしろ、精神的に大きなストレスを抱えているときや自分の価値観や感情が揺らいでいる状態のときには、ついそういったものにすがると言うか、何かまったく別のものを探そうとかしてしまう傾向があるというのは想像にかたくありません。
あるいは、単に新聞の広告欄やネットのランキングなどで見た、売れている自己啓発本なんかを気まぐれに買ってみてもですね……それが今のあなたにとって本当に有益なものかどうかは分かりません。
前にも書きましたが、「自己啓発」という言葉の一般的なイメージに引き摺られていると本来すべき、自己を「啓発する」というのは実際には何を指すのかという点に思いが至らなくなりがちです。
「啓発ってどういうことなの?」
……ということをしっかり見定めてほしいと思います。
そして、自己啓発が実際にあなたの役に立つもので、もちろん良い結果に結びつくことを私は心から願います。
燃え尽き症候群、空の巣症候群、その他ミッドライフ・クライシス(中年の危機)に含まれるような様々な問題は、このフェーズの推移に即して考えれば、
「自分は今どのフェーズにいるのか」
「では、次に何を主眼に置いたら良いか」
ということを前提に自分に起こるべき自己啓発のあり方を正しく認識する視点があれば、ずいぶん違った受け止め方ができると思うのです。