少し前までは「自己啓発」というと怪しいもの、一部の人がハマるもの、というイメージが強かったかもしれません。
しかし、昨今は一般の企業でも自己啓発制度や自己啓発手当といった仕組みができたり、履歴書に「自己啓発欄」があったりもするので、「自己啓発」という言葉も市民権を得てきたような気がします。
どう理解しているかはさておき、今じゃ中学生、高校生でも「自己啓発」という言葉ぐらいは知ってますしね。
最新の記事
- 「それは在る」を読んで思ったこと
- 「思考停止という病」を読んだときに思ったこと
- 「超雑談力」を読んだとき思ったこと
- 「苫米地英人の金持ち脳」を読んだとき思ったこと
- 「リフレクション-内省の技術」 を読んだとき思ったこと
- 『理想の人生をつくる習慣化大全』を読んで思ったこと
自己啓発との接し方
そうなってくると、自己啓発の入り口が複数化しているというか……つまり、
① 関心があって、自ら「自己啓発」を始めたい人
② 「自己啓発」的なことをしなければならない状況になった人
③ 形だけでも「自己啓発」をすでにやっている、ということにしたい人
……と、それぞれの立場から自己啓発にアプローチしてくる機会があるわけですね?
そもそもは、自ら「自己啓発」に関心を持つ人の場合には、たいていその理由として何らかの
「悩み、迷い」
「問題意識」
あるいは
「願望、欲求」
「実現したいこと、目標」
というのが(濃淡はありますが)前提として存在します。
ですから、基本的にはそれに合わせた情報や知識を得ることから始めればいいのであって、本人も入り口の段階からいきなり
「何から始めたらいいのか分からない」
なんてことは、あまりないでしょう。
ただし、自己啓発というのは、それがまさに「啓発」であるがゆえに、途中で道に迷ったり、今どこに自分が立っているのかも分からなくなったり……することは多々あります。
これに対して、本当は自分は自己啓発なんて関心ない、むしろ嫌……だけど、たとえば就職に向けた準備だったり、会社で体面を保つためだったり、その他さまざまな理由で何かしら
「自己啓発っぽいこと」
をする必要に迫られている……という場合もあり得ます。
あるいは、本当に自己啓発っぽいことなんて、やる気はさらさら無いんだけど……とにかく
「やってる、ということにしたい」
という場面もあります。
自己啓発の準備作法?
で、いずれの場合にも、これから自己啓発に取り組むという段階なのであれば、私は次の順番で考えると比較的すっきり入っていけるのではないかと思っています。
① 自己啓発とは、何なのかを自分なりに理解する
② 現状把握を行う
③ 不満な点を見つける
④ 願望を可視化する
⑤ 取り組む内容を決める
特に、自己啓発と言っても何をどうしたらいいのか分からない時や、すでに多くの自己啓発的な知識や情報を学んだはずなのに、その効果や成果を実感できない時の「仕切り直し」としても有効かと考えられますので、ぜひ一度目を通していただければと思います。
① 自己啓発とは、何なのかを自分なりに理解する
冒頭にも書きましたが、昨今は情報が容易く手に入ることもあって、まず「自己啓発」という言葉におかしなイメージをすでに持っていることが非常に多いです。
別に、今は私は
「本当は、自己啓発ってそんな悪いものじゃないだよ」
とか言いたいわけではありません。別のところでは言ってますけど(笑)
でも、今はその話じゃないので、たとえば怪しいとか洗脳だとか宗教だとか、精神的に弱い人間がハマるものだとか……もし、あなたがそういうマイナスイメージを持っているなら、それはそれで、とりあえず構いません。
ただ、それはいったん脇に置いといてください。
そして、今言っている「自己啓発」というのは、同じ語だけどまったく違う意味の言葉だと区別して考えたほうがいいです。
仮に、
自己啓発A……自己啓発本を読み漁ったり、自己啓発セミナーなどに参加したりすること、そしてそれを妄信し、洗脳されて、変な人扱いされ、人生が全部おかしくなっちゃうような危険な行為のこと
自己啓発B……もっと一般的に、自分の人生を良い方向へ導こうとするような活動をひっくるめて一言で言うと、他に適当な言葉がないので「自己啓発」と呼んでいる
というふうに区別してください。
たいてい、学校や会社で言われている場合や、履歴書に記載する際もそうですが、そういう時に言われている「自己啓発」というのは「自己啓発B」の意味で言っているのであって、それ自体に変なイメージを持ったり、必要以上に定義に悩んだりする必要性がそもそもほとんどないです。
② 現状把握を行う
次に、具体的に何をしたらいいのかわからない、どんな行動、活動をすれば一番良いのか思い付かない……という問題があります。
自分が自己啓発をしようとする目的が自分なりにすでにはっきりしている場合には割と話はかんたんなのですが、そもそも
「何をすることが自己啓発になるのか?」
というような疑問を持つ場合、最もあり得るのは自己啓発の目的が存在していないということです。
で、たとえば何でもいいから有名な自己啓発書を一冊読んでみましょう……というような、いわば「習うより慣れろ」的なアプローチもあり得ますが、有象無象の自己啓発業界……私はそれでは少し不安になります。
なので、そういう場合には、すぐに「目的」を探そうと焦らずに、一度いわゆる
「現状把握」
っていうのをやってみましょう。
まず、自分が過去やってきたこと、時間を費やしてきたことなどを振り返ります。そうですね、ちょうど履歴書を書くときのように、時系列で書いてみるのもいいでしょう。
ただし、自分で考えるときには単に学歴や職歴に限らず、この時期はこんな趣味にはしっていたなあとか、この時期、好きだった人とか、一時期目指していたこととか、どうしてそれが終わったとか……そういうものも全部含めた、自分用の履歴書みたいなもの。
それと、今度は今、現時点での日常生活はどんな感じか?
たとえば、典型的な「一日の活動」はどんな感じ?
一週間をどんなふうに使い、何にどの時間を当てているのか?
将来の希望とか、理想のあり方とか考えずに、とりあえず今そのままの状態をあらためて認識します。
それほど厳密でなくてもいいから、できれば書き出したほうがいいです。
見て把握できるので。
③ 不満な点を見つける
現状を俯瞰してみて、何か不満に思う点が見つかりましたか?
あればチェックしておきます。
思いつきにくい場合は現状の「問題点」として客観的に考えてもいいのですが、あまり理念的にならずに、自分の現状を素直に見て「ちょっと嫌だな」と思うような点を考えるほうが有効だと思います。
不満が多すぎる人向け
ここでひとつ注意点ですが、むしろ大きな不満がすでにある場合や、そもそもふだんから不満だらけだという人の場合、あなたが実はあまり意識していないような小さな不満を見落としがちなので、いったん冷静に、自分の現状を眺めて
「これはたしかによろしくない」
と冷静に感じられる点を多く挙げてみましょう。
④ 願望を可視化する
次に、自分の願望、希望を書き出してみます。
これは必然的に、さきほど考えた不満な点の裏返しみたいなものになります。
ここでも同じ注意点ですが、あなたがすでに何か大きな目標とか、あるいは観念的に「大きな、抽象的な願望」を意識している場合、それ以外のごく日常的な、細かい希望や願望に目を向けることがおろそかになりがちなので、注意してください。
「別にどうでもいいっちゃいいんだけど……でも、ここはこのほうがいいよね、どっちかというと」
という程度のある意味些細な希望や願望を意識してみると良いでしょう。
自己啓発する理由が思い浮かばない時
もしかすると、
「別に、不満も願望も……取り立てて思い浮かばないなあ」
という人もいるかもしれません。
そうなると
「じゃあ何で自己啓発のこと考えたの?」
……って話になってしまうんですけど。
でも、それなのに自己啓発チックなことをしなければならない、していると言わなければならない場面というのも実際起こるでしょう。
ところが、おそらく、このように一見して「不満も願望もない」という人であっても、じゃあ
「あなたは現状に満足していますか?」
と質問すると、自信を持って「はい」と言えない……という場合は非常に多いのです。
ちなみに、世論調査で、
「現在の生活にどの程度満足していますか?」
との質問に、
「満足している」
と答えた人は、たったの12.2%ですからね……。
ちなみに、
「まあまあ満足している」
という人が62.5%いますが、これは逆に言うと「あえて挙げれば少しは不満もある」ということですね。
さらにちなみに、上の12.2%の人だって「まったく不満がない」という意味でそう答えているとは限らないってこと……これも想像に難くないですよね?
控えめに言ったとしても……人間、不満な点を挙げようと思えば、挙げようがないってことはありません。
希望、願望にしても同じです。
俗に
「悩みがないのが悩み」
といった言い方もありますが……。
一般的な、典型的な「不満」とか「願望」というのはこういうものだ、というイメージに引きずられている場合があります。
言い換えると、不満とか願望という言葉に、すでに固定観念がある人がいます。
「言ってもしょうがないことだ」
「これくらいのことは、だれでもある」
「そういうのは、弱い人間が言うことだ」
……とか。
あるいは、他人に聞かせても
「それは確かにそうでしょうねえ」
と、納得してもらえるような種類の不満でないと、持ってはいけないのだ、とか。
そういう意味で
「別に何もないなあ」
と言っている場合が多いのです。
日常的にはそれでも構わないのですが、今は、あなたが自己啓発というものに取り組みやすくするためにしているのですから、ふだんの「不満」とか「願望」というもののイメージは関係ありません。
今は単なる「きっかけ」を探しているだけなので、ここでは現状をあえて「批判的な目で」見てみましょう。
そして、ここまで考えてから
⑤ 取り組む内容を決める
段階に入ります。
実際の活動は、何でもいい
ここまでを踏まえて、あなた自身が自己啓発として
「何をやるか」
をあらためて考えると、けっこう具体的な行為や事柄が浮かんでくると思います。
そして、あなたが選んだその行為は、別に
「いかにも自己啓発っぽい行為」
でなくてもぜんぜん構いません。
極端に言うと、考えた結果、これからあなたがしようとすることが
「映画を見まくる」
とか
「旅行に行く」
ことだったとしても、それは有効です。
自己啓発というのは、やる行為や行動の種類や内容によって自己啓発となるわけではありません。
つまり、あなたがそれを自己啓発活動と呼べるかどうかは、あなたがどんな問題意識を持ってそのことに取り組み、その結果どんな点で自分の人生が良い方向へ導かれるのかという、
「ストーリーが先に存在するかどうか」
によって決まるのです。
そのストーリーが明確に語られる事柄でさえあれば、行為や活動の内容は問わないのが自己啓発というもの(上記の「自己啓発B」のほうの自己啓発)なのです。
そして、もちろんあんまり意味不明なこじつけや、遊びみたいな事柄をあえて選ぶ必要もないわけですが、逆に言って、特に履歴書や企業のエントリーシートなどに記載する例のような場合には、むしろその内容自体は「自己啓発A」から遠い行為のほうが、むしろ心象が良いはずです。
なぜなら、それを読む人自身も、たいてい「自己啓発A」には肯定的でない可能性のほうが高いですし、内容が「いかにも」であるほど、取って付けたようで嘘くさいような印象になるからです。
そして、他人の評価は別としても……本質的にはそのほうが自己啓発的なセンスがあると言って良いでしょう。
自己啓発というのはそもそもそういうものだからです。
すぐに「目標」を決めなくてもいい
また、他の記事でもたぶん何回も書いていますが、すぐ
「目標設定」
しなくてもいいです。
つまり、自己啓発だからと言って必ずしも「明確な目標」を作って挑戦しています、というストーリーに固執する必要はないということです。
というか、もともとの「啓発」という言葉の意味をもう一度思い出してください。
仮に、あなたがすでに明確なひとつの目標を定め、それに向かってひたすら邁進している真っ最中だとします。
……もし今あなたがこのような状態にあるのならば、実は「啓発される必要性」自体が存在しません。
むしろ、啓発に結びつくような情報はノイズ、聞かないほうが良いとさえ言えます。
本来自己啓発というのは、たとえば
① 問題意識が湧き起こったとき
② 目的に迷ったとき
③ 過去のやり方や、経験が通用しない段階に至ったとき
④ 現状を変えたいとき
⑤ 自分自身の思考や、観念に疑問を持ち始めたとき
……このようなタイミングで行うほうが通常なものです。
もちろん、
「目標を決定する際の考え方や方法論」
というのも、自己啓発の主要なテーマの中のひとつではあります。
しかし、それは無数に存在する自己啓発のテーマのひとつに過ぎません。
ですから、もしあなた自身の主要な問題意識が
「自分には、明確な目標がないこと」
「目標に向かってどのように行動したらいいのか分からない」
といった部分にあると最初から分かっている場合なら、それに関係する情報を見たり、学んだり考えたりするのが良いでしょう。
しかし、目標を掲げて、それに向かって行動する、というのは、それ自体は人間の意識的行動の「型」のひとつに過ぎず、それが自己啓発というものだ、それが前提だ……というように思い込んでいるとしたら発想が逆になってしまいます。