仕事においては、
「プライオリティ(priority)」
が重要だという話はだれでも聞いたことがあります。
「プライオリティの高いものを中心に考える」
のがコツなどと言われたりします。
「優先順位」
とも言いますが、とにかく仕事をしているほとんどすべての人が「プライオリティ」あるいは「優先順位」という言葉は知っていると思います。
しかし、私の知る限りですが……実際にプライオリティ(優先順位)に従って上手く仕事を進めているように見える人はあんまりいません。
言い換えれば、プライオリティを意識することで実際上のメリットを享受している……と思える人がいないということです。
どうしてでしょう?
「プライオリティ」どころじゃない?
それで、実はその理由をいろいろ考えてみたのですが……私が思うに、みんな優先順位、プライオリティという言葉は聞いたことがあるし、意味もだいたい分かってるんだけど、
「実際はそんなこといちいち気にしてられない」
……というような感覚があるんじゃないかと、そのように結論します。
面白い言い方を思い付きました。
多くの人は
「プライオリティを考えることのプライオリティが低い」
と認識していると思うんです。
……面白くないですか? すみません。
つまり、実際仕事をしている状況ではそれぞれがもっと重要だと思っていることや、外せないポイントっていっぱいありますよね?
「優先順位を決めて、優先順位の高い方から進める」
……そりゃそうなんだけど、でも、実際にはそんなことは
「後回し」
にしたくなるということです。
もっと余裕がある時に、もしヒマができたら考えてもいいけど……今はそんなこと言ってられない、って思いませんか?
だから、実際にプライオリティ(優先順位)に従って上手く仕事を進めているように見える人があんまりいないんです。
逆に言うとプライオリティ(優先順位)に従って上手く仕事を進めている人って
「余裕があるから出来るんでしょ?」
「そもそも恵まれた環境だからのんびりそんなこと言ってられるんじゃない?」
っていう感じなのです。
違います?
「プライオリティ」の前提
私の実感も含めて、なぜそうなるかというと……実は、自分の仕事においてプライオリティを決めるとしたら、その前にクリアしなければならないことがけっこうたくさんあるからじゃないでしょうか?
① まず、自分の仕事を体系化していなければならない
自分が今やっている業務とか仕事の全体を、自分が体系的に理解できていなければその中の要素に優先順位を付けることが不可能です。
前提として、すべての問題を見落とさずに挙げなければなりません。
限られた範囲の一部分のものに優先順位を付けても無意味です。
② 正しく細分化できていなければならない
そして、全体を構成する一つひとつの作業とかタスク、問題点や課題といったそれぞれのものが「粒のそろった」ものでないと優先順位は判断しにくいです。
まとまりとして大きな概念と、より低階層の小さな概念を並べて、そこに優先順位を付けることがそもそもおかしいからです。
全部をいったん均一な単位に揃えなければ比較のしようがないのです。
③ 結局全部やらなければならない
たとえば、自分なりに「プライオリティーが低い」と判断した仕事でも、結局いつかはやらなければなりません。
優先順位を付けるというのと、そもそも「やるかやらないか」と取捨選択することは厳密には違う次元のことですよね?
優先順位とは、やるべきすべてのことのうち何に、どれくらいのリソースを費やすかということなのであって、すでに取捨選択の余地がない状態から考えなければおかしなことになります。
④ ボリュームが大き過ぎる、スピードが追い付かない
「結局全部やらなければならない」のですが、そうすると予測としてそもそも絶対に全部できる気がしない、あるいは、どうせ期限までには間に合わない……と思っていると、優先順位も何もあったもんじゃないです。
プライオリティを判断するポイントとして、よく挙げられるものに
① 緊急性
② 重要性
という2つの軸があるわけですが、そもそもこの状況下ではとにかく期限の迫ったものからできるだけ急いで終わらせるしかないじゃん! ……ってことになるに決まっています。
最後に、これとは逆の状況もあり得るわけですよね?
① そもそも仕事の難易度が低く
② 体系化するまでも内容が明らかで
③ 細分化する必要もないほど手順が明確で
④ 急ぐ必要もないほどたっぷり時間がある
……もしこういう状況にある場合、優先順位なんて考えなくてもぜんぜん大丈夫ですよね?
ただ……私が言いたいのはですね。
実は、そもそもこのような状況にあった時に、つまりそれが自分に許されている段階で……その時に
「自分は何に優先順位を置くべきか」
って、もし考えていれば。
「プライオリティなんて後回しだ!」
「プライオリティのことなんて考えてられないよ!」
……ってことにはならなかったんじゃないですか?
実は、プライオリティを考えるということの重要性は、本当は
「自分という個人にとって、きわめて優先順位が高いこと」
だったのではないでしょうか?