決定的協力者としてもう一つ挙げられるのは
「リバース(Reverse)」
です。
リバースというのは単純に言えば
「反対」「裏」
という意味です。呼び方はともあれ、必要な協力者という観点で言えば
「あなた自身が苦手、不得意な面を補完してくれる存在」
ということですから、その必要性自体はおそらくイメージしやすいのではないかと思います。
相互に補完できる相手として
まずごく単純に言っても、あなた自身がどうしてもできないと思われるようなこと頼める人、あなたが苦手とする面のことを逆に得意としている人が協力してくれたらとても助かりますよね?
「リバース」となる人は、前に挙げた「ダブル」と逆で、あなたと正反対の特徴を持つ協力者のことです。
仮にあなたが非常に良い商品を作り出したとします。商品自体のクオリティではどこにも引けを取らないものであるという自信があります。
しかし、あなたは営業や接客がすごく苦手だとします。
すると、もし営業や接客といった面で、とてもあなたが真似できないと思うようなすばらしい素質や能力を持つ人が協力してくれるなら、たぶん放っておいてもあなたは成功するでしょう。
つまり単純にいうならば、あなたが得意な部分、自分の能力を最大限に生かす部分に集中するためには
「他人に任せたほうがいい部分」
が必ず発生するということです。
自分自身のネックとなるような部分を安心して任せられる相手を探し出し強力な信頼関係を構築することが是非とも必要です。
リバースと組むことは単なる業務分担ではない
でも実は上で述べたようなことは、あらためて言われるまでもなく多くの人が心得としてすでに知っていることだと思います。
しばしば言われることですが、たとえばあなたが経営者だったとすると経理とか税務行政手続きや法律的な対策といった面は自分でやろうとせず多少費用を払ってでも専門家に任せるべきだという話を聞いたことがあるでしょう。
「餅は餅屋」
だと。
しかし、私が特に強調して
「リバース」
と言っているのは単にこういう業務を部分的に代行してもらうこと、いわゆるアウトソーシングみたいなことのみを言っているのではありません。
実をいうと「リバース」が身近に存在するかどうかというのは、あなたがやろうとしている事業や活動の初期段階で、というよりも、それがある程度形になってきて以降の段階で、それをさらに
「飛躍的に発展させる」
きっかけを作りやすいという意味で非常に重要なのです。
ですから、単にあなたができない部分を任せられる専門家と、一般的な意味で言う「コネ」を作っておく、というようなイメージで考えるのではなくて、もっと広い意味で
「自分とまったく逆、対照的だと思うような人」
を探してください。
たとえば、自分が人一倍情熱家だと自負しているなら、逆に非常に冷静で思慮深い面を持つ人。
自分が常に内省的なタイプだという自覚があるなら、イケイケの人。
あるいは、もっと極端に言うなら、たとえば自分が平均より痩せているなら、体格の良い、ちょっと太り気味ぐらいの人。
自分が異性に対して一途な性格だとしたら、交友関係に多少ルーズに見えるくらいの人であるとか。
……というように特定のひとつの面だけでなく、できれば、その相手との間に、自分と対照的だと感じる部分をもっとたくさん見つけてください。
そういう意味も含めて、まったくどこを取っても
「自分と真反対の人」
であればあるほど理想です。
もちろん現実的な制約もありますが、できるだけそういうタイプの人を意識的に探すようにすると良いでしょう。
相補性の心理とは
相補性の法則とは、端的に言うとお互いの持っている性質、機能、役割などが
「相互に依存的であること」
です。
単純な例だと、たとえば
「先生と生徒」
「上司と部下」
「彼氏と彼女」
「奴隷と主人」
……というように、どっちかが欠けると成り立たないという関係のことですね。
ところで、ふつうは特定の相手と良い関係を築くにはむしろ
「類似性の法則」
に注目するのが常道だと思います。
つまり、何らか共通性を見つけることで仲良くなりやすい。
「類は友を呼ぶ」
と言われます。
その見方からすると、一見「真逆に見える人」というのは人間関係を作りにくいと思えるかもしれません。
でも実際にはそんなことはありません。
たとえば上の例のように
「先生と生徒」
「上司と部下」
「彼氏と彼女」
「奴隷と主人」
というような場合、それはあらかじめ規定された枠組みがあればいとも簡単に成立すると考えられます。
ただし、ここで言っている
「リバース」
となり得る立場の人を求めるという時には、タイプとして自分とは真逆な(ということは、できる限り共通点がない、と言っているのと同じです)人を探し、しかもその上でその人と
「協力的メンタルフィールド」
を築くことができなければなりません。
決して不可能ではないですが、ふつうの人間関係のあり方と比較すると少しハードルが上がります。
「リバース」と協力するには、自己分析が欠かせない
そこで、まず大切な観点は、あなたにとっての「リバース」を探すにはその過程であなた自身が、たとえば
「自分の強みと弱みが何なのか」
「自分の性格や行動パターンはどう偏っているのか」
といったように、あらためて自分を客観的に分析し直す必要が生じるという点です。
そもそも、あらためて考えると、今まで漠然と持っていた自己イメージが
「実はそうでもない」
ということに気が付いたりすることは往々にしてあり得ることです。
さらに、そういった面を明確に把握し直そうとすることで、結局自分は
「何をしたらよいのか」
「何を求めているのか」
もさらにはっきりしてくるでしょう。
次に、もし対象となる人が見つかった場合に、その相手との関係を構築する際には
「あらかじめ特定の関係性を固定しようとしないほうが良い」
という観点が重要になります。
基本的には単に
「協力的メンタルフィールド」
を作り上げることだけに専念したほうが良いでしょう。
これは上でも少し言いましたが、あなたにとってそのリバースの存在は(相手にとっても同じですが)
「飛躍的に発展させる」
ところにその決定的な意味があるのですから。
だから、相補的と言っても単にたとえば
「上司と部下」
とか
「業者とクライアント」
というようなすでにある関係性の枠組みで相手との関係を固定してしまうと(あなたがそういう意識でいると)そこから先、大きな相乗効果が見込めなくなります。
それだと単に今ある範囲内で、部分的に業務をアウトソーシングしているのと変わらないのです。
「リバース」は単にあなたの弱点を補強する人というだけでなくて
「あなたの強みを増大させる」
役割を持っています。
そしてそれは、相手から見た場合でも同じことが言えます。
それでこそ相乗効果が発生します。
その上で、それはたいてい
「次なる目標」
「次なる目的」
へと視点を上げる前提となります。
要は、それによってそもそも考え得るステージそのものが上昇するということですね。
「リバース」に当たる人物があなたにとって決定的協力者と言えるのはこのためなのです。
相手を尊重し、信じること
「リバース」と言えるような人物と、互いに(場合によっては「互いに」でなくても構いませんが)有効な協力関係を構築するには、自分と相手の間にある違い、その特徴の対称性が
「どちらかが長所で、どちらかは短所である」
というふうに考えてはいけません。
特定の点についてどちらが優れていてどちらが劣っているか……という基準で見るのをやめたほうがいいです。
一般的に言えば
「強み」「弱み」
という表現をしますが……じつはこれは主に現在時点での状況観察と分析のためであって、本当のところを言えば、互いの持つ特技や特徴というのは段階に応じて、必要な場面で最大の威力を発揮することが理想です。
その過程で、ある時にはあなたの持つ力が生きるし、また別の場面では相手の持つ力が生きます。
それでこその「リバース」です。
確かに、ふつう「リバース」となる人を見つけて関係を構築するという時点では
「自分の弱み、強み」
という視点が大事かもしれません。
そうじゃないと「違い」がよく分かりませんから。
ただ、相手の役割が
「あなたの短所や弱点を補う」
というだけだったら最終的にはそれほど大きな成果を期待できるはずもないのです。
そうではなくて、あなたとその相手が組むことによって視野とか目的とか自体が開けること、そしてその範囲でその力は2倍どころか10倍、20倍……というように想像以上に膨れ上がっていくはずなのです。
そうでなければあなたにとって真に重要な「リバース」とはなり得ないわけです。
この前提だと、そもそも今あなた自身が思っている
「これが長所」
「これは短所」
とか
「自分の強みはここ」
「相手の強みはここ」
みたいな分け方そのものにとらわれることはむしろ制約を作ることになってしまうのです。
相手はあなたの目には映らない世界を見ている
実際に何らかの活動をしているとき、相手に協力を求めている最中に、たとえば相手の物事の進め方や取り組み方などが気に入らなかったとしても、リバースと見做した人に、
「あなたも少しは、こういう面も考えたら?」
とか、
「そういうところは直してほしい」
とか……その人が苦手としている部分について諫めたり忠告したりするのはたいていの場合まったくの見当違いです。
それはあなたから見た場合にそう見えるというだけであって、あなたがまったく見えていない部分が相手には見えており、だからこそ相手はそのように行動しているのだと(半ば無理やりにでも)信じるべきです。
……というか、そこをしっかり信じてあげられるような相手こそ「リバース」として選ぶべきなのです。
苦手部分を克服したり、思考や価値観が偏らないようにバランスに配慮したり……実はこれは組織の中ではしばしばあり得るアドバイスです。
しかし、少なくとも自分自身にとっての「PNW」を構築しようとする場合、たとえ純粋に善意、好意から出た言葉だとしても、そういった助言はまったく余計なお世話であるばかりか、協力的メンタルフィールドを築くためにも逆効果です。