FXや株式投資を学び始めると、必ず
「損切りがいかに重要であるか」
を強調されます。
使っている手法などによりますが、ふつうはたとえば
① エントリーする前に先に損切りラインを決めておくこと② 相場が想定と異なる動きを見せたらすぐに損切り③ 資産量から逆算して耐えられる損失額を割り出しておく
といったアドバイスは一般的によく見かけると思います。
ところが……実際にFXをやっていると、けっこうな割合で
「損切りしたことが裏目になる」
という状況に出会います。
あるいは、損切りすることを躊躇している間にうまいこと相場が反転して利確できる時があります。
もちろん教科書的な言い方だと、
「そうだとしても、それは当初の自分の目論見から乖離しているのだから、それでよかったと考えるべき」
「たまたま損切りしなくて利益が出たという経験をすると、むしろその後損切りを軽視するようになるのでマズい」
という話になると思います。
「しかし、それは本当なのか?」
実際にトレードしていると、このような疑いの気持ちがつい出てくることが少なくありません。
多くの人は
「実際に損切りしたほうが良いのか?」
「実はしないほうが勝率が上がるのでは?」
「今の損切りの設定で本当にあっているのか?」
などといつも不安と疑念を持ちながら相場を見ているのだと思います。
相場は必ず戻る
一方、別の面ですごく長い目で見ると、その瞬間にはどんなに離れているように見えても、ほとんどの場合FXの相場というのはいつかは再度その値に戻ってきます。
どれほど想定外の暴騰、暴落であっても、何か月後、何年後には絶対相場は戻るでしょう。
特にFXの相場というのは通貨同士の相対的な関係を表すものです。
なので、ごく原則を言えば
「常にレンジレンジ相場」
であるとも言えます。
メジャーな通貨同士ならなおさらのことです。
相場はいつか絶対に戻るわけです。
で、この原則から言うと……少なくともFXにおいては
「損切りすることはすごく長い目で見れば常に損失である」
という言い方が成り立ちます。
あるいは、
「どんなポジションも、永遠に損切しなければいつかはプラ転する」
とも言えます。
利回りを上げるために損切りする
ですから、すごく単純に言うと、仮に
「適当にポジションを持って、プラスになるまでひたすら待つ」
というだけでも、ある意味ひとつの手法ということもできます。
そしてこの手法は、たぶんだれも採用していないと思いますが、これはこれで非常に妥当な、一種の「必勝法」です。「聖杯」です。
でもじゃあどうして実際だれもやらないかと言えば……それは、
「他の手法と比べてあまりにも利回りが悪いから」
です。
つまり、永遠に損切しないならほぼ確実に勝てるのですが……しかし、それよりも他のいろいろな手法のほうが利回り、資産効率が良いという前提があるのです。
で、当然それらはすべて損切りするという規則を含んでいることになります。
逆に言うと、損切りすることを前提とした手法というのは、どんなものであれ必ず
「まったく損切しないという手法よりは効率が良くなければならない」
ということになりますね。
損切りルールは手法とセットになっている
現実には、今やっているあなたの手法において、あるいは実際のトレードの都度
「損切りするか、しないか?」
という点だけを問い、悩むことは実は意味がありません。
仮にどんなに膨大なデータを取っても、トレード手法そのものと切り離して損切りするかしないかという点だけを純粋に理論的、確率的に明言すること……それ自体が土台無理なのだという話になると思います。
なぜなら、あらゆる手法はその中に損切りのルールをすでに含んでいるはずだからです(絶対永遠に損切しない、という手法を除いて)。
それなのに損切りすべきかどうかいつも悩んでしまうとか、都度のポジションを見ていると予定通りに損切りできなくなるとか……もしそういう症状が出てしまうということは、その人が使っている手法は一見すると優位性があるように見えるけれど実はまだ不完全なもので……結果として含み損が発生した場合に損切りすべきか、そのままポジションを維持して耐えるべきか、という点がまさにギャンブルになっているから都度迷ってしまう……と見るべきではないでしょうか?
実際のところは、一般に優位性があると認められている手法の多くが、一定のルールに従って損切りする場合があるということとセットになって成立しているはずです。
言い方を変えると、もしあなたが今やっている手法が本当に「優位性のある手法である」場合には、含み損を抱えたときにはルールに従って損切りすることによって初めてその優位性が発揮されるものであるはずだ、ということが言えると思います。
あなたのその手法は損切りするというルールをも含んだものです。
だったら常に妥当なタイミングで適切に損切りしたほうが当然良いという話になり、もしそれを疑うなら、あなたが今行っている手法そのものを再度検証する必要があるのです。