今度は「目的」と「目標」の違いを考えてみたいと思います。
目的とは、辞書で調べると
【目的】
―goo辞書
① 実現しようとしてめざす事柄。行動のねらい。めあて。
② 倫理学で、理性ないし意志が、行為に先だって行為を規定し、方向づけるもの。
というふうに出ています。
ちなみに
【目標】
―goo辞書
① そこに行き着くように、またそこから外れないように目印とするもの。
② 射撃・攻撃などの対象。まと。
③ 行動を進めるにあたって、実現・達成をめざす水準。
です。
違いが分かりますか?
実は言葉の使い方としては目的と目標はほぼ同じ意味で用いられることが非常に多いです。
だからこそ区別に迷ってしまうわけですが……一般的に使う場合は、それほどこだわらなくても、どちらを使ってもたいてい大丈夫なのです。
目的と目標の関係性
ただ、あえて区別して使いたいときもあります。
するとその違いがはっきり分からなくなることが多いのです。
一般的には、多くの場合「目的」というのは最終的なもので、その途中過程で「目標」が発生する……というように説明されることが多いでしょう。

こんな感じでイメージしている人が多いでしょう。
ここで、よく考えると「目標」というのは最終的な目的に対しては
「手段」
と位置付けられていることが分かります。
この図式だと、目標というのはある目的に関する
「手段を具体化したもの」
という関係になります。
……ただ。
実は上の区別の仕方というのは、素直に考え直すと単に
「目的とは、最終的な目標のことである」
という意味になりますよね?
つまり、意識の上で最も上位に位置付けられている「目標」だけ他の目標と区別するために特別な名称を与えているだけというふうにも見えますよね?
一番上のだけ
「目的的な目標」
で、それ以外は
「手段的な目標」
なのだと言ってもいいですけど……いずれにしろこれでは、本当言うと「目的と目標の違い」をはっきり説明したことにはならないのです。
もちろん自分がそれでしっくりくるなら構わないのですが、おそらく、何となくわかるような気がするけど本当はしっくりこない……という方も多いのではないかと思います。
目的とは「概念」である
(ここからは私の個人的な解釈になります)
目的という言葉と、目標という言葉。この言葉そのものの違いを明確に区別するとしたら、私の考え方はこうです。
まず目的というのは
「抽象的な概念」
を表す言葉です。
これに対して「目標」という場合には、これはあくまで特定の
「事実」
を表す言葉と考えます。
もちろん、目標という言葉も抽象名詞なのですが、それが指すものは常に現実の状況や状態、実体的な行為とか事実についての想定です。
ですから、目標といった場合には必ず未来のいずれかの時点でその真偽が判定され、確定されることがあらかじめ予定されています。
そのことを
「結果」
といいます。
目標というのは実体的なものだからこそ数値化できたり、明確な基準によって達成できたかどうかを客観的に判定できるわけです。
これと比較して言うと「目的」というのは
「手段」
という語と対をなして
「関係性」
を表す概念に過ぎません。
目的とは、あなたが想定している、またはイメージしている何かしらの対象が、他の何かとの関係において
「目的と位置付けられている」
ということ(だけ)を指します。
だから、その何かしらの対象というのはもちろん
「行為や状態」
でも良いのです。ただし、その場合にはそもそも
「目的と目標の違い」
を考える必要がないのです。
言い換えれば、その時には
「目的が、目標を達成することそのもの」
と認識されているから、本当は「目的」という語を使う必要自体がない、とも言えます。
目的とは「主観」である
ところが、上で言った何かしらの対象というのは必ずしも特定の状態や、行為の結果に限られるわけではないのです。
ある時には意思や意図だったり感情だったりしても構いません。
……というか、実のところ人間は自覚していない場合でも本音では特定の意思や感情(たとえば満足感、達成感、幸福感など)のほうを目的化していることのほうが圧倒的に多いわけです。
ですから、仮にイメージしていたような状況が実際に起こったとしても、そのこと自体が即直接的に
「目的を達した」
ことにはならない場合が多いのです。
たいていそこに行為者などの解釈や評価が介入するからです。
目的というのは「結果」に対応する言葉ではないので、その現実に起こった状況や事態を実際に見て本人がそれを
「良かった、思った通りだった」
と主観的に認めることで初めて目標と目的の間に整合性が認められ、それによって目的が達せられたことになるわけです。
もちろん
「想像していた以上に素晴らしく良かった」
という場合でも目的は達せられたことになります。
あるいは、仮にそれが偶然や結果論だとしても可なのです。
しかし、実際にやってみたら
「ぜんぜん想像していたのと違った」
「こんなことになるとは思わなかった」
と感じた場合、それは想定していた事態は現実になったけれども……つまり想定していた目標は達成されたのだけれども、それによって目的が達せられてはいない。
こういうことも起こり得ることになります。
……これがつまり目的と目標の違いなのです。
まとめますと。
「目的」に対応する語は「手段」となり、これらはどちらも抽象的な関係性を表す言葉です。
「目標」に対応する語は「結果」です。これらはどちらも実体、事実上の状態を指す言葉で、前者が未来の未確定なものであるのに対して、後者は過去の確定したもの……という関係になります。