「〇〇君は欲がないねえ」
と言われたことのある人。
多くの場合、そういわれた本人は自分では欲がない人間だなんて感じていないはずです。
なぜそういわれるのか不思議な気がするでしょう。
「欲」の種類
本来なら、欲がないと言われる人たちだって
「自分がやりたいことだけをしたい」
「やりたくないことは、したくない」
というのは基本的に同じだと思います。
どんなに理屈を付けようが、これが人間のもともとの欲求です。
この意味で、欲がまったくない人間など存在するわけがありません。
しかし、このように言うと、まるで動物のように本能のままに生きるのが一番良いみたいな話に聞こえますよね?
しかし、人間はそんな単純ではありません。
他のさまざまな事情や、思考や価値観の中で、現実の行動を選んでいます。
義務とか。
仕事とか。
人の目とか。
安定とか。
将来とか。
で、私はもちろん、そんなこと考えないで、純粋に本能のまま生きればいい……などと言うつもりはありません。
ただ、ここで私が言いたいことは、
「やりたいこと」
って、生理的欲求や、快楽的な願望だけじゃないよ……ということです。
たとえば、
「無欲でありたい」
と言うの自体が、その人にとってひとつの欲望だとも言えます。
若者や、自分の子供などに「欲がない」と嘆いている人も、別に本能をそのまま出せって言いたいわけじゃないですよね?
もう少し、何事にも気力や意欲をもってほしい、積極的になってほしいっていう意味で言ってるだけですよね?
「欲がない」と言われる人の内発的動機付けの方法
特に、私が感じるのは、人間って、自分自身が
「本当は正しい」
と心の中で思っているのに、その通りに行動したり、表現したりできない場合があるじゃないですか。
私は、自分を振り返ってもすごく感じるんですけど、むしろそれを曲げてしまっていることのほうが多いくらいじゃないでしょうか?
現実の生活を考えると。
そして、代わりに
「親や先生が言うからしょうがない」
「仕事だからしょうがない」
「私の役割だからしょうがない」
「現状維持のためだからしょうがない」
「問題が起こりそうだからしょうがない」
「迷惑になるからしょうがない」
……というふうに自分を納得させて、
「本当は正しくないと感じる行動」
を選んでいるんじゃないですか。
まあ、それを批判したいわけではないです。
私だってそうですし。
現実には、そのほうが妥当な判断だという場合が多々あります。
私が言いたいのは、人間って、本当なら正しいと思うことをストレートにそのまましたいんじゃないですか?
もし、そうであったらどんなに幸せなことでしょう。
ですから、
「自分が正しいと思うことをしたい」
というのは、本当は自分にとって
「すごくやりたいこと」
ですよね?
ふだんはほとんど諦めてますけど。
「やりたい」
という感情の中には、自分が正しいと思っていることするということが含まれます。
「欲のない子」は正義に飢えているかも
「欲がない人」「無気力そうに見える人」というのは、おそらく一般的にイメージしやすい意味での
「欲」
たとえば物欲とか、独占欲とか、自己顕示欲とか……そういう、ある意味他人から見て分かりやすいタイプの欲が、バランスとして低く自覚されているのです。
もちろん、まったくないわけではないし、他人と比較して少ないという意味でもありません。
つまり、本人の内面で、主観としてです。
実は、それよりもっと大きな欲を持っているから、表面上「欲がない」ように振舞っているだけです。
その「欲」というのは、多くの場合
「正しくありたい」
「よい人間でありたい」
または
「よい子だと思われたい」
「優秀だと思われたい」
……というようなタイプの欲求ではないでしょうか?
つまりいわゆる「正義感」あるいは「理想主義」であったり「自己尊重欲求」であったりするわけですが、そういう欲が本人の意識の中で相対的に高いわけです。
でも世間一般に、そういうタイプの欲求は「欲」と呼ばないから、欲がないように見えるんです。
「正しいことをしたい」という意思は強力な動機付け
内発的動機付けが重要だという話を聞きます。
外的な条件からくる動機付けではなく、環境などによらずそもそも自分の内から湧き起こってくるような動機のことです。
たとえば生理的欲求、本能といったものや、あるいは人間にもともと備わっている知的探求心、好奇心などとともに、それと同程度に
「正しいと思うことをしたい」
という思いは本来非常に強い内発的動機であるはずだと思います。
もちろん、さまざまな理由でそれを抑えている人がほとんどです。
実際には常に葛藤があり、選択が必要でしょう。
でも、もともとそれは「やりたい」ことの中に含んで良いもの、立派な(むしろ物欲とかより重要な)欲求です。
自分がやりたいことが分からないという人が多くいるようです。
あるいは、我が子に何か強い動機付けや、意欲を与えたいと願っている親御さんも多いでしょう。
もしかすると、
「あなたが本当に正しいと思っていることは、どんなことなの?」
そう語りかけてみる機会があれば、強い動機付けにつながるかもしれません。